プロジェクトマネジメント
プロジェクト・チームが与えられた任務を達成できるよう、幅広い観点からプロジェクトをマネージすること。いわゆる「QCD`(品質、コスト、進捗)」だけを管理する従来型のプロジェクト推進手法とは異なり、コミュニケーションやリスクなどの要因も考慮する。従来型の手法と区別するため、「モダン・プロジェクトマネジメント」と呼ぶこともある。国内のIT業界では2000年前後から注目を集め始めた。
モダン・プロジェクトマネジメントの事実上の国際標準「PMBOK(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)」は、九つの観点(「知識エリア」と呼ぶ)からプロジェクトを進めることを推奨している。具体的には、(1)統合、(2)スコープ(プロジェクトの目的と範囲)、(3)タイム、(4)コスト、(5)品質、(6)人的資源、(7)コミュニケーション、(8)リスク、(9)調達—である。
このうち品質、コスト、タイム(進捗)以外の要素は、PMBOKなどの標準が整うまで体系立てて説明されることが少なかった。各マネジャが勘と経験を頼りに、独自のやり方で進めていたのが実態だ。このためマネジャの能力によって、プロジェクトの成否が大きく左右された。
そこでPMBOKをはじめとする体系は、プロジェクトの運営から属人的要素を極力排除する。マネジャが実施すべき行為を明確に定め、「プロジェクトを進める上で必要なこと」としてまとめた。一定レベル以上のマネジャなら、だれでもプロジェクトを円滑に運営できるようにするのが最終目的である。
モダン・プロジェクトマネジメントの体系を導入したからといって、これまでよりもマネジャの作業量が増えるわけではない。例えば、PMBOKのリスクの項目は、「定期的にどのようなリスクがあるかを特定し、文書化する」ことを推奨している。こうしたことを自然にやっていたマネジャも多いはずだ。
そうした意味で、モダン・プロジェクトマネジメントで規定する各項目は、“できるマネジャ”が「意識せずに行っていたこと」といえる。“もう一歩”のマネジャは、自分のやり方を標準体系に照らし合わせ、「何が足りないのか」を把握できる。結果として、マネジャ全体の質を底上げする。“できるマネジャ”は標準に触れることで、自分のやり方の強みや独自性を確認できる。標準と自分のやり方の違いを把握した上で、さらに自分のスタイルを確立すればよい。
モダン・プロジェクトマネジメントの適応領域はIT関連にとどまらない。これまでも防衛、建築関連のプロジェクトなどで採用されており、むしろIT関連は導入が遅れている。
最近は、企業経営の進め方としても期待されている。企業における各種の経営活動を一つのプロジェクトと解釈し、モダン・プロジェクトマネジメントの手法を適用する。これを「エンタープライズ・プロジェクトマネジメント(EPM)」と呼ぶ。