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戦略の立案を支援する分析手法。自社の強みと弱み、機会と脅威の4つの視点で考えを整理する。マーケティングの分野で活用することが多い。

 徹底したコスト削減による低価格戦略で、デフレ時代に勝ち組みの名を欲しいままにしてきたA社。ところが、安さだけでは売れなくなった現在はすっかり競争力を失ってしまいました。そればかりか、「安い」というイメージが顧客に定着し、価格を上げることもままならず収益を圧迫しています。

 一方、ライバルのB社は業績好調。移ろいやすい顧客のし好を巧みにとらえて新商品を次々に投入する戦略が功を奏しました。市場環境の変化を見逃さずに、数年前からマーケティング力を強化していたのです。

 経営戦略や商品企画を立案する際、自社の強みや弱みといった内部的な経営環境に加えて、顧客ニーズの変化やライバルの動向といった外的な経営環境など、考えるべきことは多岐にわたります。綿密に練ったつもりでも、どこかを見落としたまま判断してしまうこともあるものです。

 そうした漏れがないように、強み(Strength)や弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの視点で情報を整理し解決策を導き出す手法を、それぞれの頭文字を取って「SWOT分析」と言います。

◆効果

思考の可視化で正しく意思決定

 SWOT分析は、強みと弱み、機会、脅威の軸から成る4象限のマトリックスを描き、各象限に当てはまるアイデアを書き出していきます。図表を使うことで問題点を整理でき、解決策を見つけやすくなるのが利点です。

 自社の強みは何かといわれても、なかなか決定的なものを思いつかないこともあります。まず、はっきり分かっている市場の状況を書き出していき、それに対して自社ができることやできないことを考えていけば、見落としや思い込みを防げます。

 内部的な経営環境だけで判断すれば、冒頭のA社のようなことになりかねません。現時点ではすぐに競争力につながらない施策でも、将来の市場を見極めて地道に続ければ、市場が変わったときにライバルに差をつけられます。

◆事例

収益の種見極める

 三菱化学では、研究開発部門でSWOT分析を取り入れています。2001年から、研究テーマを提案する際、研究開発者がSWOT分析を実践した結果を提案用紙に記入するという制度を設けました。新技術は将来の収益の種。SWOT分析によって芽が出そうな研究開発案件を取捨選択しています。

 商品企画にSWOT分析を生かしているのが日産自動車です。商品企画部門は、地域別のトレンド情報や自社の持つ人材や技術といった経営資源を考慮して最終的な商品計画を決定しています。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp