中長期的なバランスを取りながら目標を実現するための業績評価モデル。「財務」、「顧客」、「業務プロセス」、「人材と変革」などの視点を採り入れている。
バランス・スコアカード(BSC)は、企業のビジョンと戦略を業務目標や人材育成まで落とし込んでビジネスの目的を達成するための業績評価モデルです。BSCの提唱者である米ハーバード大学のロバート・S・カプラン氏と経営コンサルタントのデビット・P・ノートン氏は、BSCを「飛行機のコックピット」、すなわち戦略的ナビゲーション・システムと表現しています。BSCによって、企業経営に不可欠な情報をタイムリーに入手し、環境の変化に応じて的確な意思決定を可能にしています。
1990年代、企業は短期的な業績を追うあまり、顧客満足度の向上や従業員のモチベーション向上といった中長期的な視点の投資が疎かになりました。こうした反省からBSCが登場しました。
そのためBSCは、売上高や投資利益率、キャッシュフローに代表される「財務の視点」はもとより、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「人材と変革の視点」から業績の評価基準とその基準を達成するためのアクションプランを作成。このプランを実行し、その結果をフィードバックして企業を変革します。
◆効果
ビジョンと戦略が明確に
大きなポイントは、短期および長期の業績、全社および部門の目標、株主および顧客、社員の利害関係などのバランスを取っている点です。
BSCは単なる業績評価モデルではありません。企業のビジョンと戦略がより明確になり、経営トップから従業員1人ひとりの目標設定までが周知徹底され、長期的な競争優位を獲得できる戦略的なマネジメントシステムです。BSC導入によってより迅速に問題を発見できるようになり、その結果、より迅速にアクションを起こすことが可能になります。
◆事例
スルガ銀行が実践
欧米を中心にBSCの導入で成果を出す企業が出てきていますが、国内でもいくつかの企業で導入事例が出始めています。例えば先進的なIT(情報技術)活用で知られているスルガ銀行は、2001年10月以来BSC導入を検討し、2003年4月から本格稼働させています。
BSC導入で従業員の行動の自立性が高まり、業績評価にも活用できているようです。今後は、日常業務の問題点を洗い出し、BSC自体の評価方法の確立などを進めていく計画です。
リコーは1999年にBSCを導入し、一定の成果を上げています。現在、部門評価制度と戦略の結び付きがまだまだ弱いとして、制度の見直しに乗り出しています。また、自己資本比率13.18%と、地銀のなかで健全性トップの鹿児島銀行も、2003年4月から短期経営計画の進ちょく管理にBSCの考え方を取り入れています。