インターネットを介して、パソコンに保存したファイルをやり取りするためのツール。音楽や映画などの不正コピーを交換する行為が社会問題になっている。
音楽CDや映像DVD、コンピュータソフトといったデジタルコンテンツの不正コピーが大きな社会問題になっています。自分が購入したCDやDVDを個人的な利用のために複製するのなら違法行為にはなりませんが、複製を他人に譲渡するという違法行為が増えつつあります。
違法行為が増えた背景には、インターネットを通してファイルをやり取りする「ファイル交換ソフト」の存在があります。こうしたソフトをパソコンにインストールすると、自分が持っているファイルをネットを通して公開するとともに、他人のパソコンに保存されたファイルを検索できるようになります。さらに、検索したファイルをコピーすることも可能です。
このため、自分が欲しいコンテンツを検索して、不正コピーするといった違法行為が実行できてしまいます。
◆動向
ツールを無償で入手可
社団法人のコンピュータソフトウェア著作権協会が2003年5月に発表した「ファイル交換ソフト利用実態調査」によると、国内のインターネット利用者でファイル交換ソフトを利用している人は3.4%、過去に利用した経験がある人が3.0%で、前年に比べて利用者が増加傾向にあるとしています。
利用者が増えている理由は、ファイル交換ソフトの多くが、インターネットを通して無償で入手できるためです。一時期、音楽ソフトを不正コピーするためのソフトとして大きな話題を集めた「ナップスター」も、ファイル交換ソフトの一種です。最近では、「WinMX」や「Winny」という名称のツールが不正コピーに利用されるケースが多いようです。
◆事件
国内で利用者を逮捕
京都府警察ハイテク犯罪対策室と山科警察署、五条警察署は2001年11月、世界で初めてファイル交換ソフトの利用者を刑事摘発しました。WinMXを使ってコンピュータソフトを不特定多数が複製可能な状態にしたとして、東京都と埼玉県の男性をそれぞれ著作権法違反の疑いで逮捕しました。
京都府警と五条署は2003年11月にも、Winnyを利用して著作権法違反を働いていたとして、愛媛県と群馬県の男性を逮捕しています。
ただし、こうして表沙汰になるのは、極めて異例。違法行為を察知するのが難しいためです。
ファイル交換ソフトの多くは、利用者のパソコン同士を連携させる「ピア・ツー・ピア」と呼ぶ技術を使っています。この技術では、利用者やデータを管理するサーバーが不要なため、利用状況の把握が難しいのが実情です。