トラックや航空機による輸送から、環境に与える負荷が小さい鉄道や海運などの輸送手段に転換すること。鉄道のCO2排出量は、トラックの8分の1程度と言われる。
地球温暖化、森林破壊、水質汚染——。環境問題が、企業にとって無視できない重要なテーマになっています。地球環境に対して企業活動が及ぼす影響は大きく、消費者の関心も確実に高まっています。それだけに今後は、環境対策に無関心な企業は市場から退場を促されることさえあるでしょう。
特に、地球温暖化に注目が集まっています。日本は今年6月、京都議定書を批准しました。その結果、1990年を基準とし、2008年からの5年間で年平均6%の温暖化ガス削減を義務づけられたからです。
◆効果
CO2の排出量を削減
地球温暖化対策として、物流分野の改革は避けて通れません。その好例が「モーダルシフト」です。これはモード(輸送手段)をシフト(転換)するという意味で、具体的には、トラックや航空輸送から、鉄道・海運といった大量輸送手段に転換することを指します。
鉄道や海運は、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などの温暖化ガスの排出量が、トラックなどに比較して格段に少ないのが特徴です。そのため、環境に与える負荷が小さいのです。
実は企業が排出するCO2のうち、物流段階で出す割合が想像以上に大きいといいます。例えば、サントリーの調べでは、同社が排出するCO2全体のうち、物流によるものが3割以上を占めているそうです。ここにメスを入れることは、環境対策において大きな意味を持ちます。
◆実例
電機大手が相次ぎ本腰
ここ2~3年、モーダルシフトに本格的に取り組む企業は確実に増えています。例えば、ソニーやキヤノン、シャープといった電機メーカーが積極的です。
キヤノンは今年度中に製品輸送の約7%をトラックから鉄道や海運にシフトさせます。関東・関西間は鉄道、関東・九州間はフェリー輸送に変更し、年間550トンのCO2を削減する計画です。これは国内における製品物流による排出量の約14%に相当するそうです。
シャープも2004年度を目標に、全商品物流量に占める鉄道コンテナの割合を、現在のほぼ2倍の15%程度に引き上げる計画です。
一方、物流会社もモーダルシフトへの対応を進めています。日本通運は、トラックの荷台を切り離して、そのまま貨物列車に積めるシステムを導入済み。来年9月からは東京・博多間で商船三井フェリー(本社東京)との共同運送も開始し、モーダルシフト対応体制を強化します。
今後さらにモーダルシフトを推進するには、貨物列車や船舶の本数を増やしたり、モーダルシフトに適した港湾や貨物駅の充実などが必要になるでしょう。