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コンピュータだけでなく、機械制御や通信制御の機器への搭載も想定して開発された国産OS(基本ソフト)。最近では、携帯電話やネット家電で広く採用されている。

 オフィスや家庭ですっかり定着したパソコンは、どの機種にもOS(基本ソフト)が搭載されていて、それにはウインドウズやマッキントッシュといった種類があるのはご存じでしょう。

 ただし、OSを搭載するのはパソコンだけではありません。携帯電話やデジタルカメラといったデジタル機器も、動作を制御するためにOSを搭載しています。パソコンと違って、これらの機器のOSが何であるかはあまり知られていないのではないでしょうか。

 パソコン市場では海外製OSが大勢を占めていますが、小型機器向けを中心にした市場では、「TRON(トロン)」という日本製のOSが使われていることが少なくありません。

 「ユビキタス」と呼ばれるいつでもどこでもデジタル情報を扱える社会の到来を迎えて、最近、トロンへの注目が高まっています。

◆効果
速くて軽い国産OS

 トロンは、1984年に東京大学の坂村健教授が提唱したOSです。現在、トロン協会(本部東京)が、CPU(中央演算処理装置)や作業環境を含めて仕様の標準化を進めています。

 トロンの仕様は公開されています。誰でも自由に、OSを組み込んだハードウエアやソフトウエアを開発できます。主に、あらかじめ機器に搭載して製品化した「組み込み型OS」として採用されています。

 加えて、要求された時間内に目的の処理を完結するように設計された「リアルタイムOS」の機能を備えるため、高速動作に優れている点がウインドウズと異なります。例えば、自動車エンジンの制御に適しています。

 こうした特徴を評価して、トロンを採用する企業が増えています。昨年6月には、NECや日立製作所といった大手電機メーカーなど22社が共同で、ネット家電などに搭載するハードやソフトをトロンを基に開発することを表明しました。

◆事例
主導権争いが激化

 搭載機器の出荷台数では、トロンはウインドウズよりも普及しているともいわれます。

 NTTドコモの携帯電話では、多くの機種がトロンを採用しています。トヨタ自動車も「プラド」や「クラウン」といった車種にトロンを搭載。エンジンの制御などに活用しているようです。

 NECや日立などがトロンを使ったネット家電用OSの標準化を進める一方、ソニーと松下電器産業が昨年12月に、無償OSのリナックスを基にしたAV(音響・映像)機器用OSを共同開発することで合意しました。パソコン業界はマイクロソフトが席巻しましたが、ネット家電業界では、今後、OSの主導権をめぐって競争が激化しそうです。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp