動画データ圧縮技術の一種。データを数学的手法で圧縮し、記録・送信しやすくする。標準規格として、DVDや衛星放送、携帯電話などで広く使われている。
テレビや映画といった動画のデータ量は膨大です。日本のテレビ放送では、1秒間に30枚もの静止画を切り替えて、動いているように見せています。1時間番組なら、30×3600秒で10万8000枚。音声や静止画などに比べてケタ違いのデータ量は、デジタル形式で記録・送信する際の障壁になっていました。
しかし、コンピュータの処理能力向上や、記憶媒体の容量拡大、安価で大容量の通信網の発達などのおかげで、動画をパソコンで編集したり、通信回線を通じて配信することが一般的になってきました。
こうした動画のデジタル化において重要なのが、様々な手法を使って膨大なデータを圧縮する技術。「MPEG」(エムペグ)は動画圧縮技術の代表的な規格です。本来は、ISO(国際標準化機構)の下部組織である「Moving Picture Experts Group」の略称ですが、ここで作られた規格もそのままMPEGと呼ばれています。
◆効果
データ量が数十分の1に
DVDで使われている「MPEG-2」では、圧縮技術を使わない場合と比べて、データ量は数十分の1まで小さくなります。その分だけ1枚のディスクに長時間の動画を記録できたり、通信回線を通じて短時間で送信できます。
MPEGでは、いくつかの数学的手法を用いてデータ量を少なくしています。例えば、野球でピッチャーが投球するシーンを考えてみましょう。ボールは動きますが、画面の大半を占める球場の風景は動きません。であれば、画面全体ではなくボールの動きだけをデータとして記録すれば、データ量を削減できるというわけです。
◆事例
DVDや衛星放送などで採用
すでに私たちの生活には、MPEGが深く入り込んでいます。DVDのほか、BS・CSデジタル放送でもMPEG-2が採用されており、2003年末に開始予定の地上波デジタル放送でも使われます。
MPEG-2よりさらに圧縮率を高めた「MPEG-4」は、NTTドコモとauが、カメラ付き携帯電話同士で動画をやり取りするときのデータ形式として採用。インターネットでの動画配信でも一部でMPEG-4が使われています。
「MP3」(エムピースリー、MPEG-1 Audio Layer IIIの略)では、CDの音楽を音質を落とすことなく10分の1程度のデータ量に圧縮できます。ミュージック・シーオー・ジェーピー(本社東京)などがネットでの音楽販売で採用しています。一方、MP3のデータはCDから簡単に作成できるため、ネットにおける違法な音楽データのやり取りが問題になっています。