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日常業務や商品開発における失敗をネガティブなものとして忌み嫌うのではなく、事業を成功に導くため、積極的に活用しようとする考え方や動きを提唱したもの。

 雪印食品、みずほ銀行、三井物産、日本ハム、東京電力——。社内の不祥事や致命的なトラブルの発覚で、日本を代表する大企業が長年築き上げてきた社会からの信用を失いかけています。

 こうした企業に共通しているのは、マイナスの情報が経営トップや他の部門にまでなかなか伝わらなかったことです。失敗にはふたをして隠してしまおうという発想が現場に根付いていると、こうした事態に陥りやすくなります。

 企業の不祥事が相次ぐ直前の2000年末、これらの事件を予見していたかのような書籍が発刊されました。工学院大学の畑村洋太郎教授が著した『失敗学のすすめ』(講談社)です。畑村教授は同書の冒頭で、「いまこそ失敗とのつき合い方を変えなければ、ますます大きな失敗が続くことになる」と述べています。

 畑村教授は、失敗学という何か特別な学問を研究しているわけではありません。「もっと失敗と向き合って、プラス面に目を向けよう」と訴え続けているだけです。それがいまの日本企業には必要だと繰り返し説いています。

◆効果
失敗情報の収集が対応策に

 失敗とは何も、企業の存亡にかかわるような大きな不祥事だけを指すわけではありません。現場で起きている日々の小さなトラブルや、営業や企画部門での受注や提案の失敗なども含まれます。

 大事なのは、そうした失敗情報を収集して責任者に素早く伝え、かつ社内で社員が共有できる体制を作り上げることです。失敗情報の収集と共有は、そのまま失敗への対応策につながります。

 過去の失敗が生かされなければ、社員の作業効率は向上しません。しかも同じ失敗を繰り返すことになり、企業の信用は確実に失われていきます。

◆事例
失敗許す文化を育てよ

 世界の有力企業のなかには、早くから失敗情報の活用に取り組んできたところがあります。特に進んでいるのは、製造業の研究・開発部門でしょう。新しい製品を開発する過程には、失敗がつきものだからです。

 住友スリーエム(本社東京)は、実験や試作品などの失敗情報をデータベースに登録しています。同社は、過去の失敗こそが最大の資産であると考えており、創業以来、失敗を許容する企業文化を育て上げてきました。失敗に真っ正面から向き合える体制に、社員は誇りを持っています。

 同社では、販売中止になった商品の開発経緯などを隠そうとはしません。積極的に他の部門にも公開して、次に生かそうとしています。

川又 英紀 hkawamata@nikkeibp.co.jp