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金融機関が破たんした際、定期預金などの払戻保証額を元本1000万円とその利息までとする制度。日本では1996年からペイオフを一時的に凍結し、預金を全額保護してきた。今年4月に凍結を解除し、定期預金などの定期性預金が全額保護の対象外になった。来年4月からは普通預金をはじめとする決済性預金の全額保護も終わる。

 ごく平均的な日本人にとって、「預金は元本保証でリスクゼロ」というのが普通の感覚です。ところがもはや、この“常識”は通用しません。銀行などの金融機関が万一破たんすれば、預金が全額返ってくるとは限らないからです。今年4月1日以降は原則として、「保証されるのは元本1000万円までとその利息分」になりました。これが「ペイオフ」と呼ばれる制度です。

◆狙い
保護されるのは1000万円まで

 ペイオフはなにも新しい制度ではありません。1971年に創設された預金保険制度の1つで、古くから存在していました。

 預金保険制度の加盟金融機関が経営破たんに備えて保険料を積み立てておき、実際に破たんしたときにそのなかから預金者に対して保険金を支払います。保険金で確実に保証される金額が、1000万円とその利息分というわけです。

 金融システム危機に対応するため、96年から一時的にペイオフは凍結。預金は全額保護されてきましたが、今年4月から本来の制度に戻ったのです。

 注意したいのは、ペイオフで保証されるのは「1金融機関、1預金者当たり1000万円とその利息分」という点です。ある預金者が、同じ銀行の複数口座に預金を分散しても、合算して1000万円を超える部分は保証の対象外です。

 ただし、絶対に1000万円までしか戻らないというわけではありません。1000万円を超える部分は、破たん金融機関の資産状況に応じてカット率が決定します。つまり、破たんしても比較的資産が健全な場合は、1000万円を超える分も一部は支払われることになります。

 ペイオフ解禁は2段階で進みます。まず今年4月からは、定期性預金(定期預金や貯蓄預金)などにペイオフが適用されます。外貨預金のように本来は預金保険制度の対象外のため、1000万円の保証がなくなるものもあります。この場合、破たんした金融機関の財産の状況に応じて返済額がカットされます。

 来年4月からは、決済性預金(普通預金など)にもペイオフが適用されます。

◆事例
企業は取引金融機関の絞り込みへ

 ペイオフは個人だけでなく、企業や自治体にも適用されます。対策としては、(1)複数の金融機関に預金を1000万円ずつ分散する、(2)信用力が高い(破たんする可能性が低い)金融機関に預金を集中する、(3)安全性が高い預金以外の金融商品を利用する——などが考えられます。

 (1)は個人なら可能ですが、多額の資金を管理しなければならない企業にとっては事務作業が繁雑になり、事実上不可能です。そこで、(2)や(3)の対策を採るところが多いようです。石川島播磨重工業などのように、銀行が破たんしたら借入金と預金を相殺できる契約を結び、借入金の範囲内に預金を抑えようという企業も増えています。

花澤 裕二 hanazawa@nikkeibp.co.jp