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全国の行政機関のどこからでも本人を確認できるネットワーク・システム。氏名、生年月日、性別、住所の情報を共有。届け出・申請手続きを効率化できる。

 地方赴任のために引っ越すことになったA氏。「転居の手続きのために、現住所と引っ越し先の役所に行かなければならなくて煩わしいなあ。1回で済んだらいいのに」とつぶやきます。ただし来年には、こんな煩わしさがなくなるかもしれません。転入先の役所に行けば手続きが完了するからです。

 行政機関への届け出・申請の手間を軽減してくれるのが、8月5日に稼働した「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)」です。国や地方公共団体といった行政機関を専用回線で接続し、住民の氏名、生年月日、性別、住所の4つの情報を共有するシステムです。住民票コードと呼ぶ11ケタの番号を基に、全国どこの行政機関でも住民情報を取得できるようになります。

◆効果
本人確認の手間を軽減

 住民は、各種届け出・申請の際に居住地の市区町村から通知された住民票コードを行政機関に伝えることで、手続きを簡略化できます。この8月からはまず、一部の手続きにおいて住民票の写しを窓口に提出する必要がなくなります。恩給の支給や、宅地建物取引業や建築士の免許取得などが対象です。

 来年8月からは、住民票の写しを全国の市区町村でも取得できるほか、冒頭で紹介したように転入・転出の手続きが1カ所で済むようになります。

 このほか、希望者には「住民基本台帳カード」と呼ぶICカードを発行します。このカードは、住民票コードに加えて、様々な情報を記憶する仕組みを備えています。これを使って福祉カードや図書カード、施設利用カードとして活用することも考えられています。

◆課題
個人情報保護に不安も

 従来、住民基本台帳は各市区町村のコンピュータで管理していました。ネットワーク化により、あらゆる行政機関で住民情報を入手できるようになるため、情報漏えいのリスクが高くなります。

 これに対して、国は様々な個人情報保護の措置を講じています。各行政機関には、法律で規定した目的以外の利用を禁じています。民間企業は住基ネットを使えません。

 関係職員には秘密を漏らした場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金を課します。システム面でも不正アクセスの防止などの対策を講じています。

 しかし、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」が成立するまでは、個人情報が無制限に活用される恐れがあると不安を抱く自治体が少なくありません。8月5日時点で、福島県矢祭町や東京都杉並区、同国分寺市は、住基ネットへの参加を拒否しました。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp