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繊維・アパレル業界で、素材メーカー、加工業者、卸、小売業などがパートナーシップを確立し、IT(情報技術)を利用して情報を共有することで納期や在庫を削減し、収益構造を改善しようとする戦略。米国で1980年代半ばに始まった。繊維・アパレル業界におけるSCM(サプライチェーン・マネジメント)に相当する。

 つい最近まで「デフレ経済の雄」とばかりに持てはやされていたユニクロ(ファーストリテイリング)の店舗が、苦戦しているそうです。品質を落とさず、幅広い年代が着られるカジュアルな服を低価格で提供するというビジネスモデルは、早くも行き詰まったのでしょうか。

 苦戦の最大の理由はあまりにも売れ過ぎたため、顧客が欲しいと思う服をだいたい買ってしまった、ということに思えます。つまり「過去に売れたから今年も売れ筋のはず」は通用しません。新鮮な素材やデザイン、コーディネート提案などで顧客を飽きさせない一方、売れそうな動きをいち早くとらえ、柔軟な追加生産で機会損失を防ぐことが一層重要になるでしょう。

 これに似た試みは1980年代半ばに米国繊維業界で始まっています。素材・加工メーカー、卸、小売業が共通の情報基盤上で緊密に情報共有して、分断されていた業務を一気通貫型に組み直し、納期や在庫を圧縮するのです。いわば繊維業界のSCM(サプライチェーン・マネジメント)ですが、当初からこうした動きを「QR(クイックレスポンス)」と呼んでいます。ただ繊維業界でも最近は、「SCM」を使うことが多いようです。

◆効果
企業連携で納期や在庫、コストを削減

 80年代初頭の米国の繊維・アパレル業界は安い輸入品に押され、国内景気も低迷し、産業空洞化が進みつつありました。1社だけでは生き残り策に限界があることから有力企業が集まり、業務の改革、商品コードの標準化やEDI(電子データ交換)標準の作成などを始めたのです。

 QRは単に「素早く商品を生産、供給する」ことだけを指すのではありませんが、アパレルの場合は納期短縮は重要課題です。かつての米国の例では、原糸から最終製品になって店頭に並ぶまで66週間かかっていたといいます。そのうち実に55週間が、在庫になっている時間や移動時間でした。これでは、トレンドに対応する商品供給は困難です。

 QRの取り組みで、リーバイ・ストラウスやJ・クルー、ウォルマート・ストアーズなど多くのアパレル・小売業で納期や在庫、コストの削減、顧客満足度の向上といった大きな成果が報告されました。

◆事例
民間の取り組み相次ぐ

 日本では、93年末に通産省(当時)が発表した「新繊維ビジョン」を基に、官主導でシステム開発や実証実験などの取り組みが始まりました。現在、国としてのQR推進活動の事務局は、中小企業総合事業団に引き継がれています。

 最近は民間ベースの動きが活発です。東レや蝶理などが、XML(拡張可能なマークアップ言語)をベースにアパレルEDIの共通基盤作りを進める「アパレルアーク」をスタートさせています。オンワード樫山や三陽商会など12社の出資で、アパレル業界のSCM対応や情報化を支援する「コロモ・ドット・コム」も設立されました。

秋山知子 takiyama@nikkeibp.co.jp