PR

社員1人当たりの労働時間を減らして、仕事を分かち合うこと。賃金をカットする代わりに雇用を維持するのが主な狙いだ。1970年代半ば以降、慢性的に失業率が高かった欧州諸国で先行し、雇用機会を拡大して失業者の発生を抑える効果を生み出した。育児と仕事の両立を希望する人に就業機会を与えるために実施した企業もある。

 昨年12月28日に総務省が発表した「労働力調査」によると、日本の失業率は過去最悪の5.5%を記録しました。ここにきて小泉内閣の「痛みを伴う構造改革」というスローガンの「痛み」の一部は、失業を指していることが明らかになったわけです。

 景気の先行き感が予想以上に悪化するなかで、もはや余剰人員を抱える余力を持つ企業などありません。かといって大規模なリストラに踏み切れば社員の士気は下がり、いざ景気が好転した際は、必要な人材を確保しにくくなる可能性もあります。

 そうしたなかで、リストラに代わる雇用調整の方法として、にわかに浮上してきたのが「ワークシェアリング」です。

◆事例
オランダは雇用創出で成功

 ワークシェアリングは、日本でも一部の製造業が実施しています。その多くは生産調整や定年延長などに伴って1人当たりの労働時間を制限するもの。例えば、99年に日野自動車が55歳以上の社員の雇用を維持するためにワークシェアリングを実施したほか、三洋電機も雇用維持を狙って今年4月から複数部門に導入する予定です。

 こうした取り組みは一企業が行うものですが、欧州では官民が一体となって推進しています。なかでも最も成果を上げているのはオランダです。オランダでは、96年に「同内容の仕事をするパートタイマーと正社員の間で賃金格差を認めない」という法律を制定し、これを受けた多くの企業は積極的に正社員からパートタイマーへの転換を推進。82年に11.4%だった失業率は、2000年に2%台へ改善しました。

 このほか、米ヒューレット・パッカードは、育児や介護と仕事の両立を希望する女性を対象にしたワークシェアリングを試みています。これは正社員1人分の仕事を特定の2人が労働時間を分担して任うもので、仕事への責任を共同で負い、評価や処遇も一対になって受けます。

◆課題
評価体系などの課題は山積み

 導入の機運が高まるワークシェアリングですが、課題は少なくありません。まず、労働組合などの同意は不可欠です。加えて、誰が職場に来ても同じ仕事ができるインフラが欠かせません。様々な情報や知識を共有する情報システムを駆使しなければ、生産性は向上できないでしょう。

 それ以上に大きな問題は人事考課です。雇用形態にかかわらず1人ひとりの働きを正当に評価できなければ、ワークシェアリングは軌道に乗りません。

 近年、多くの日本企業は米国型の成果主義を採り入れようと試行錯誤を重ねています。そうした改革と並行して、成果を上げない人材をリストラで切り捨てるのか、ワークシェアリングで社員に痛みを共有させるのか。経営者はさらなる難題を突きつけられているのです。

三田真美 mmita@nikkeibp.co.jp