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図1 Advanced TCAは通信事業者向けハードウエアの規格である
図1 Advanced TCAは通信事業者向けハードウエアの規格である
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図2 各社の製品を柔軟に組み合わせられる(イラスト:なかがわ みさこ)
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 Advanced TCA(ATCA)とは,通信事業者向けコンピュータのハードウエア規格である。ATCAでは,外枠(シェルフ)の形状とそこに挿入するカード(ブレード)のハードウエア仕様を規定している(図1)。ちなみに,TCAとはtelecom computing architectureの略である。

 ATCAは2002年にPICMG(PCI industrial computer manufacturers group)という組織が「PICMG3.0」として標準化したもの。ATCAで決められているのは,きょう体のサイズや構造のほか,電源を入れたままカードを抜き挿しできる機能(ホットスワップ)などである。これらは通信サービスを提供する際に求められる信頼性や可用性を考慮して規定された。ATCA規格のサーバーは,CPUや各種チップが載ったカード単位で通信処理を実行する。このため,カードを追加することで装置全体の処理能力を高めることができる。

 ATCAは,NTTドコモが一部のサービスで採用しているほか,電話サービスとデータ通信をIPネットワークに統合するNGN(次世代ネットワーク)を実現する目的で,多くの通信事業者での導入が見込まれている。実際,最近になって続々と登場しているNGN向けコンピュータの多くは,ハードウエア規格にATCAを採用している。

 ATCAが注目されている背景には,設備投資や運用にかかるコストを抑えたいという通信事業者のニーズがある。現在の通信事業者の設備は,通信事業者ごとの独自仕様だったり,ベンダーの独自仕様だったりする部分がかなり多く,素早くかつ低コストで導入できないケースが見られた。そこで,ATCAでは外枠(シェルフ),カード,カードに対して機能を追加する小型のモジュール(メザニンカード)などの各部品がそれぞれ規定することで,特定分野に強い専業ベンダーがATCAカードを開発できるようにした。こうすることで,ベンダー間の競争が活発になり,結果的に通信事業者は求める機能を素早くかつ低コストで手に入れやすくなる(図2)。

 ATCAは事業者だけでなくベンダーにもメリットがある。ゼロから機器を設計して各機能を作りこむのは時間とコストがかかるが,他社のモジュールを組み合わせて使えば自社の得意な部分だけに力を注ぐことができる。こうして特徴のある製品を,製品開発の期間を短くしながら作れるようになる。

 ただし,ATCA規格通りに作られた製品であればどれでも組み合わせられるというわけではない。ATCAにはオプションとなっている項目が多く,それらの組み合わせは規定されていない。例えば,A社とB社が異なるオプションを採用すると,A社のシェルフにB社のカードを挿しても動かない場合がある。こうした事情から,ベンダーは自社のシェルフへの接続性を確認できたカードを公表していくことになりそうだ。

 いくつかのベンダーは,他社の部品との組み合わせをしやすくするための取り組みを始めている。2006年初めには,オプションの組み合わせを規定する「SCOPE Alliance」や相互運用性を検証する「CP-TA(communi-cations platforms trade associa-tion)」という組織が作られた。相互運用性だけでなく,信頼性や可用性を高めるためにソフトウエアの標準化なども進んでおり,ミドルウエアの標準化を担当するSAF(service availability forum)のほか,Linuxベースのキャリア向けOS「Carrier Grade Linux」を採用することで信頼性を確保している。

 ATCAは2002年に作られた少し古い規格ですが,最近では,きょう体のサイズを小さくした派生規格「Micro TCA」が登場している。ATCAは日本で多く使われている一般的な19インチのラックに収まるように作られているが,Micro TCAはATCAのカードに挿すメザニンカードをシェルフに直接挿せるようにした。形状が小さいので,サービスが検討されている広域無線技術WiMAXの基地局として採用されることが見込まれている。