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図 UHF帯無線ICタグは,従来の無線ICタグに比べ角度は狭いが遠くまで認識できるようにした(イラスト:なかがわ みさこ)
図 UHF帯無線ICタグは,従来の無線ICタグに比べ角度は狭いが遠くまで認識できるようにした(イラスト:なかがわ みさこ)
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 UHF帯無線ICタグとは,UHF(ultra-high frequency)帯の電波を使った無線ICタグのことである。従来から使われていた無線ICタグに比べて,リーダーと通信できる距離が長いのが特徴である。半面,電波干渉が問題になりやすいため,それを解決するための工夫が盛り込まれている。日本では,総務省が2006年1月にUHF帯を無線ICタグに使うための省令改正を実施し,2006年末から製品が発売される見込みである。

 無線ICタグは,商品タグなどに小型のチップとアンテナを組み込んだものである。チップに記録した製品番号などのデータを,アンテナを介してリーダーと通信してやりとりする。現在の主流である13.56MHz帯の無線ICタグは,リーダーに電流を流して周囲に磁場を作り,その磁場で無線ICタグを動作させてデータを読み取る電磁誘導方式を使っている。磁場はリーダーを中心に前後左右に広がるので,広い角度で無線ICタグを読み取れる。ただ,通信できる距離は1メートル程度までとなる。

 一方,UHF帯無線ICタグは電波をリーダーから無線ICタグに放射してデータを送受信する電波方式を採っている。効率的に通信するために電波を集中させて送っている分,読み取れる角度は狭いが,通信距離は最大7メートルに及ぶ。13.56MHz帯の無線ICタグが狭い範囲しか照らせないランプとすれば,UHF帯は遠くまで照らせる懐中電灯に相当する(図)。

 電波方式を使う無線ICタグとしては,これまでにも2.45GHz帯の無線ICタグがあったが,この2.45GHz帯無線ICタグの通信距離は最大2メートルにしか達しなかった。周波数が高く波長が短い分,UHF帯に比べると電波が遠くまで効率的に届かなかったのである。

 このような特徴から,UHF帯無線ICタグには従来の無線ICタグと異なる用途が期待されている。例えば,物流倉庫で個々の荷物にUHF帯無線ICタグを貼り付け,倉庫の出入庫口にゲート型のリーダーを設置しておく。この荷物を出庫/入庫する際,まとめてカートに積みこんでおいたままでも,UHF帯無線ICタグならゲートを通るだけで荷物の情報がまとめて読み取れる。

 ただ,通信距離が長いことで電波干渉が問題となる。近くに複数のリーダーを設置すると,リーダーの電波同士がぶつかったりしてデータを読み取れなくなったり,一つの無線ICタグに複数のリーダーの電波が飛んできたりすると,データを正しく読み取れないことがある。

 この問題を解決するため,UHF帯無線ICタグでは無線LANのように周波数帯を複数のチャネルに分けて使い分けられるようにしている。ただし,日本ではUHF帯無線ICタグで利用可能な周波数帯域のほとんどが携帯電話に割り当てられているため,省令改正で無線ICタグに割り当てられた帯域は950M~956MHzの6MHz幅だけ。周囲の帯域に電波が漏れるのを防ぐには,実際に使える周波数帯はさらに絞られる。

 据え置き型リーダーで使える周波数帯は952M~954MHzの2MHz幅分で,これを200kHz幅ずつの9チャネルに分けることになる。米国が26MHzの帯域幅を500kHz幅ずつの50チャネルに分けて利用するのに比べると,とても狭い範囲の利用になる。しかも,同時に使うチャネルは二つ程度離す必要があるため,必ずしもすべてのチャネルを使えない。

 こうした厳しい条件でUHF帯無線ICタグを使うため,省令改正の技術要件にはLBT(listen before talk)という技術が盛り込まれている。これはほかに通信しているリーダーがないか確認してから電波を出すしくみである。また,メーカー各社は電波の出力を下げて通信距離をあえて短くしたり,リーダーにセンサーを取り付け,無線ICタグが通ったときだけ電波を出すなどの工夫もしている。