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図 IEEE802.11eで規定する二つのQoS実現技術
図 IEEE802.11eで規定する二つのQoS実現技術
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 IEEE802.11eは,複数の端末が帯域を共有する無線LANで,特定の種類のデータだけを優先的に送るQoS(quality of services)制御を実現する規格である。標準化は2005年9月に完了した。

 IEEE802.11eでは,QoSを実現するのに2種類の方式を規定している。それは,優先度の高いフレームを先に送るようにするEDCA(enhanced distributed channel access)と,優先度の高いフレームに専用の帯域を割り当てるHCCA(hybrid coordination function controlled channel access)である(図)。優先度は,MACフレームのヘッダー部分を拡張して設けたQoSコントロール・フィールドで指定するようになっている。

 EDCAは,端末がフレームを送信するまでの待ち時間を調整することで,優先度の高いフレームを送りやすくする方式だ。フレームを優先度別に4種類に分け,優先度の高いフレームはほかの端末の送信が終わったあと,送信を開始するまでの時間を短めにする。

 具体的には,ほかの端末の送信が終わったあとの待ち時間(フレーム間スペースとランダム待ち時間)を短めにする。結果として,優先度の高いフレームが先に送信される確率が高くなる。

 優先度の低いフレームは,優先度の高いフレームの送信が完了するのを待って,改めて送信処理に入る。このように待ち時間の差を付けることで,優先処理を実現するわけだ。

 ただし,EDCAには問題がある。優先度が高いフレームの送信が増えると,効果が小さくなるのだ。多くの端末が高い優先度でフレームを送信しようとすると,優先制御の効果がなくなってしまう。

 そこでIEEE802.11eでは,より確実にフレームを送れるHCCAを用意している。HCCAでは,アクセス・ポイントがCF(contention free)-Pollという制御用フレームで,優先度の高いフレームを送信する端末に時間を割り当てる。割り当てられた時間の間,端末はほかの端末にじゃまされずにフレームを転送できる。

 HCCAでは,無線LANのアクセス制御方式であるCSMA/CA(carrier sense multiple access with collision avoidance)を一時的に停止し,アクセス・ポイントが主導権をとって通信時間を割り当てる。実装は大変だが,帯域を1台ずつ個別に割り当てられるので,厳密なQoS制御を実現できる。また,HCCAには,トラフィックが増えても帯域の使用効率が落ちないという特徴もある。多くのユーザーが同じ帯域を共用する無線IP電話システムを構築するのに有用な技術といえる。