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図 エバネセント通信の概要
図 エバネセント通信の概要
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 エバネセント通信とは,建物の鉄骨などを媒体として使いデータを送受信する新しい通信技術である。LANケーブルを使わないが無線通信でもない,ちょっと変わった技術だ。

 建物の鉄骨は壁や柱の中に埋め込まれているので,直接接触してデータ通信に利用できない。そこでエバネセント通信では,導体の周りに漏れ出る電磁波(エバネセント波)を使うことで,導体(鉄骨)に触れずに通信を実現する。

 エバネセント通信には,パソコンに実装する無線機のほかに,電流を鉄骨に流して電磁場を発生させるエキサイタ(励振器)と呼ぶ装置が必要となる(図)。通信するには,2台のパソコンにそれぞれ無線機を実装し,1台のパソコンをエキサイタに接続する。もう1台のパソコンは壁の近くに置く。パソコンに実装する無線機は,送信機能と受信機能を両方持つため,こうすることで双方向の通信が可能になる。パソコンの台数が増えると,エキサイタにつないだパソコンがサーバーとなり,各パソコンは交互に(時分割で)サーバーと通信する。

 エバネセント波の存在自体は研究者の間で知られていたが,これを通信に使うことはほとんど考えられていなかった。技術の特許はココモ・エムビー・コミュニケーションズが持つ(国内では出願中)。

 同社の試作機では,IEEE802.11a無線LANと同じ変調方式を採用し,54Mビット/秒の最大伝送速度を実現した。利用する電波の周波数は25M~45MHz。無線LANが使う2.4GHz帯や5GHz帯よりもだいぶ低い帯域である。無線通信の場合,アンテナに電流を流して遠くまで電波を飛ばすが,エバネセント通信で使うエバネセント波は伝搬区間が長くなると急激に減衰してしまう。ただし,建物内だと周囲の鉄骨すべてからエバネセント波が発生するので,壁から約5m程度までの場所ならどこでも高速に通信できるという。

 ココモ・エムビー・コミュニケーションズは2003年に実験局免許を取得して実験を重ね,無線機をPCカード・サイズまで小型化した。さらに,総務省に実用化の検討を働きかけた結果,ARIB(電波産業会)が総務省の委託を受けて2005年9月に技術調査を始めた。その結果は,2006年3月に報告書としてまとめられる予定である。