指導役のコーチと受講者がペアになり、コーチが投げかける問いに答えて対話するなかで、受講者が持つ潜在能力や可能性を最大限に引き出す手法。スポーツの世界で始まったが、業務の成果は社員のやる気なしには得られないという考えからマネジメント分野に広まった。管理職の人材育成や士気の高揚を狙って採り入れる企業も多い。

 「生産性を高めるために業務プロセスを見直し、新しい情報システムを導入する」というニュースは、毎日のように聞かれますが、「予定通りの効果は出なかった」という後日談が届くことも日常茶飯事です。

 「仏作って魂入れず」ではありませんが、理想的なシステムと業務プロセスに切り替えたところで、社員がやる気を起こして新しい仕組みを生かそうとしなければ業務改革の効果は生まれません。素早く大胆な改革の矢を放ち、確実に成果を上げなければ勝ち残れない時代になったことで、“やる気の創出”は、重要な経営課題の1つとなりつつあります。そうした背景から社員のやる気を引き出す手法として注目を浴びるのが「コーチング」です。

◆背景
課題解決能力を身につける

 コーチングはもともとスポーツの世界で専任のコーチ(指導者)が選手を指導するなかで発達し、80年代後半に不況にあえいでいた米国のビジネス界で広まりました。今やゼネラル・エレクトリック(GE)やフォードなど米国企業の多くがマネジャーに必要な職務要件の1つに、コーチングを挙げるほどです。

 一般にビジネスのコーチングは、専門のスキルを持つコーチと受講者の対話により行います。コーチは受講者が実現したいと願う目標を明確にし、それを達成できるように支援するのです。その際、コーチは一方的に指示を出すのではなく、効果的な質問を投げかけ、受講者は考えたことや感じたことを自由に話します。そうして、受講者は頭の中を整理し、「なぜその目標を実現しなければいけないのか」「実現には何が必要なのか」を考えやすくなり、それがやる気の創出にもつながります。

 さらに自分では思いつかない質問を受けることで新しい視点が生まれ、アイデアや解決策が見えやすくなるといわれます。

◆事例
GEの成果受け日本企業の導入相次ぐ

 世界的に見ても卓越した経営者の1人であるGEのジャック・ウェルチ前会長は、自らコーチングを習得し、部下の潜在能力を引き出すことで業務改革を推進しました。GEにおける成果が伝わったこともあり、日本でもコーチングを新しいマネジメント手法や人材育成ノウハウとして採り入れる企業が急速に増えています。

 コーチングを管理職以上の研修に採り入れる企業は、野村証券やカルビー、ヤマト運輸など業種を問いません。コーチングのテーマも「業績向上」「マネジメントスキルの向上」「時間管理」「コミュニケーション力の向上」など様々です。日本で最初にビジネスのコーチングを紹介し、企業向けコーチング事業を手がけるコーチ・トゥエンティワン(本社東京)は、電話を使ってコーチングを実施しています。

三田 真美 mmita@nikkeibp.co.jp