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文・岡野高広(日立総合計画研究所社会システム・イノベーショングループ 研究員)

 NGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)とは、IP(インターネットプロトコル)技術を中核にした次世代ネットワークの総称です。従来の回線交換式の電話回線網を、IP技術をベースにしたものに置き換えることによって、固定電話の安定性とインターネットの柔軟性の両方が実現し、新しいサービスの提供が可能になることが期待されています。

 従来のインターネットでは、誰でも自由に利用できる半面、データの改ざんやなりすましなどの不正行為が可能であるため、企業などが機密性の高い通信を行う際には、VPN(Virtual Private Network)専用のルーターやソフトウェアなどが必要でしたがNGNではネットワーク自体に帯域保証機能とセキュリティ機能をもっているので、公衆網でありながら専用線同様の安定性と安全性を提供することができます。

 NGNではQoS(サービス品質)制御という機能があり、ネットワーク全体に十分なリソースがあるのを確認した上で、特定のパケットに対して優先度をコントロールすることができます。これにより、映画などの大量のデータ通信が必要なアプリケーションに対しても帯域の保証ができます。また、NGNでは端末がネットワークに接続する時点で個別認証を行います。これにより、誰がどの端末からどの回線に接続しているかを把握できるため、高いセキュリティの実現が可能です。

 NTTグループは、2006年12月から1年間の予定でNGNの実証実験を東京と大阪で実施しています。実験には、情報家電メーカー、インターネット接続業者、コンテンツ提供業者などが参加し、実際の機器を使用しての技術確認やユーザーニーズの確認を行っています。NTTの計画では、2007年にはNGNの商用利用を開始し、2010年には3000万世帯に光ファイバーとNGNを提供するとしています。

 NGNで可能になる新サービスとして、次のようなものが挙げられます。

  • 遠隔医療サービス(遠隔地でも高速で大容量のデータ通信が安定的に行えるため、遠隔手術などが可能)
  • 生産物トレーサビリティ(個別認証が可能なため真正性の高い情報管理が可能)
  • FMC(Fixed Mobile Convergence:携帯電話と固定電話の違いを意識させない通信サービス)

 NGNの実現は自治体にも影響を与えます。NGNを契機に、これまで個人情報保護や通信速度などの制約により実現が難しかったサービスの実現や従来サービスの効率化が可能になります。例えば、医療、防犯・防災、教育などの分野への導入が期待されています。また、日立製作所やNECなどの大手ベンダーは、NGNへの対応強化のために組織再編を行っており、民間分野だけでなく、行政分野への普及を目指しています。

 またNGNでは、現在主流のIPv4に比べて、非常に多くのIPアドレスを割り振ることが可能なIPv6を利用します。これにより、すべての端末がネットワークにつながるユビキタス社会が実現できると言われています。

 NGNと現在のインターネットの大きな違いは、NGNが通信事業者に管理されたネットワークであるという点です。利用者にとっては、NGNにより高品質な通信環境を実現し、付加機能などが増やせるという面がありますが、サービス提供業者からみると通信事業者の管理下にあるため、現在のインターネットに比べるとサービス提供の自由度が低くなるという面もあります。

■表 NGNと従来のインターネットの比較
項目 NGN 従来のインターネット
通信品質 高い(通信速度や安定性などの品質保証が可能) 不安定(ベスト・エフォート型)
マルチアクセス 1台のパソコンをxDSL、無線、FTTHなどにシームレスな接続が可能 個別にネットワーク接続が必要
課金、認証、決済機能 通信事業者が提供するプラットフォームの利用が可能 利用者が独自に設定
不正利用やウィルスへのセキュリティ 高い(利用者はすべてネットワーク接続時に個別認証される) 低い(匿名性が高い)
サービス提供の自由度 低い(サービス提供業者は通信事業者との契約に基づきNGNを利用可能) 高い
サービス提供業者に対する通信事業者の影響力 大きい(通信事業者がサービスプラットフォームを独占することから、囲い込みにつながりやすいと言われている) 低い
出典:日立総合計画研究所

 もちろんNGNの導入により、現在のインターネットが急になくなるわけではありません。例えば金融や行政、医療など、高速の通信速度や高度なセキュリティ機能が必要なサービスではNGN、家庭でのメールなどは従来のインターネット、といったように目的や用途に応じて利用のすみ分けが進むと考えられます。