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企業において、経営戦略を実現し競争力を高める目的で情報システムがうまく活用されるようにするための、組織体制・意思決定の仕組みのこと。

 東京証券取引所は今年1月18日、ライブドアに強制捜査が入った直後の取引量急増でシステムの処理能力が限界に達し、全面取引停止に追い込まれました。昨年11月にもシステムトラブルによる取引停止、同12月にはシステム不具合のために誤発注取り消しができなかった問題が発生。システムにかかわる失態を繰り返しています。

 「IT(情報技術)ガバナンス」とは、「企業が競争優位性構築を目的に、IT戦略の策定・実行をコントロールし、あるべき方向へ導く組織能力」(旧通商産業省による定義)のことです。すなわち、経営とITを上手に橋渡しするための体制を指します。

CIOがカギを握る

 東証トラブルの一因は、組織としてITガバナンスが欠如していたことにあります。東証は今年2月1日、ITガバナンスの強化策として執行役員CIO(最高情報責任者)のポストを新設し、NTTデータ出身の鈴木義伯氏が就任しました。鈴木氏は就任会見で、「東証のエンタープライズ・アーキテクチャーを整理するなど、経営とITを結び付ける策を進める」と述べました。

 東証は、新興企業でも上場しやすい新市場「マザーズ」を新設したり、個人投資家を証券市場に呼び込むための啓もう策を展開するなど、取引を活発にするための経営戦略を推進してきました。しかし、戦略通り活発になった取引量に、システム増強が追いつかないという皮肉な結果になりました。経営とITの結び付きが弱かったと言わざるを得ません。

 ITガバナンスの指針としては、経済産業省が2004年10月に改訂・公表した「システム管理基準」が有名です。この基準は「情報化投資計画は、経営戦略との整合性を考慮して策定すること」「システム化によって生ずる組織及び業務の変更の方針を明確にすること」など287項目を定めています。情報セキュリティーの確保や災害時対応といった内容も含まれます。

 内部統制の強化を求める「日本版SOX法」の制定が目前に迫っていますが、ITガバナンスも内部統制の重要な要件になります。例えば、社内情報システム上で会計の不正操作が可能で、経営を混乱させるリスクがあるなら、それを是正していくことが必要でしょう。

経営幹部がIT投資を議論

 海運大手の川崎汽船では、CIOである久保島暁常務や営業など各部門の役員が集まって、毎月「IT委員会」を開いています。1000万円以上のIT投資案件は、この場で承認を得なければなりません。案件ごとの投資対効果についても、人件費や物流効率などの指標で細かく算出することになっています。

参照:日経情報ストラテジー 2006年4月号 168ページ「特別寄稿・日本版SOX法の最新動向」、同192ページ「ビフォー・アフター・TDK」