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文・石井 恭子(日立総合計画研究所生活システムグループ 主任研究員)

 2007年2月8日、青森市と富山市が、改正後の中心市街地活性化法の下で初となる基本計画の認定を政府から受けました。中心市街地活性化法の正式名称は、「中心市街地の活性化に関する法律」です。駅前などの中心市街地ににぎわいを取り戻すための仕組みを構築する目的で、1998年に施行された「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」が、2006年8月に改正されて名称が変更になったものです。

 法改正のポイントは主に4点あります。

 第1点目は、まちづくりにおけるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルの確立です。法改正により、地方自治体は基本計画の認定を受ける条件として、数値目標と目標年限を明記することが必要となりました。政府は、数値目標に達しない場合は、改善策を検討させたり、支援措置を打ち切るなどの対応をすることになっています。取り組みの進捗状況を誰でも評価できるだけでなく、その評価に基づいて改善策を検討して前進することが可能となります。

 第2点目は、地方自治体における選択と集中の促進です。法改正前は、一自治体で複数の地区が中心市街地として認定され、支援措置を受けることができました。このため、力が分散して中途半端な取り組みに終わってしまう例が散見されました。一方で、認定を受けた地方自治体は、郊外に大規模な商業施設を誘致することが可能となっていたために、認定された地区の商店街の客が郊外に流れるという現象が起こってしまっていました。

 そこで、法改正後は一自治体で原則一地区の認定とするとともに、政府に認定の申請をする際には郊外の大規模商業施設に関する方針を盛り込み、一定の規制を実施することが求められるようになりました。

 第3点目は、多様な民間主体が参画する仕組みです。改正前の法律で街づくりを運営・管理する機関として定義されていたのは、TMO(Town Management Organization)でした。政府は、TMOを引き受ける受け皿となる組織として、商店街組合などを中核に設立された第3セクターや、商工会、商工会議所を想定していました。その結果TMOは、各地の商工会議所が中心となって運営し、商店街の活性化の中でも主に商業の側面を担ってきました。

 しかし、例えば商店街に隣接する住宅地をどうするか、といった課題はTMOだけで検討することは困難でした。また、商店街自体も、例えば商店の移設や駅ビルの建設を伴った場合、地権者やまちづくりの実施に関わる建設・土木系の事業者の参画が不可欠となりますが、商業系のTMOでは必ずしもそうした関係者を巻き込むことができませんでした。

 法改正により、中心市街地活性化協議会を設置することが、政府から認定を受けるための条件となりました。中心市街地活性化協議会には、商工会や商工会議所などに加えて市街地の整備や住宅開発を行う事業者、地権者、建設業者などの多様な民間主体が参画し、今後商店街を含めたまち全体の活性化に取り組むことになります。

 第4点目は、市街地と商店街以外の活性化に向けた取り組みです。改正前の法律の名称(中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律)が示す通り、これまで政府のさまざまな施策は市街地の整備と商業の活性化に偏る傾向にありました。法改正に伴い、従来の市街地整備や商業の活性化に加えて、まちの中での居住の推進や、図書館・病院などの公共公益施設の中心市街地への集積促進、ビルのリニューアルといった事業に対しても政府からの支援が受けられることになりました。

 改正された中心市街地活性化法とITとの関係については、主に3つ挙げられます。

 第1に、PDCAサイクルの中でのITの活用があります。まちづくりは、住民などの生活に関わることであるため、PDCAサイクルのどの段階でもインターネットを用いて情報を公開していくことが重要になります。また、特にPlan(計画)とCheck(評価)の際にITが不可欠になると考えられます。数値目標を設定する際は、達成の見込みなどを検討する必要があります。ITを用いることで、見通しの計算が比較的容易にできます。評価の際にもさまざまなデータの集計などに、ITの活用が必要となるでしょう。

 第2に、多様な民間主体の参画のための手段としての活用があります。これまで以上に多様な民間主体の参画を実現するといっても、それぞれに活動する人たちを巻き込むのは容易なことではありません。しかし、例えばインターネットや電子メール、Webサイトなどを活用することで、時間や場所の制約を克服することが期待できます。

 第3に、まちの活性化策でのITの活用があります。例えば、今般基本計画が認定された青森市の場合、2006年度から「まちなか散策コースの整備事業」を実施していますが、今後散策コースの情報提供にインターネットなどITを活用することになっています。

 現在全国の地方自治体で、中心市街地活性化基本計画の申請が進んでいます。今後認定を受けるまちが増え、全国的に取り組みが広がることが期待されます。