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 HD Radioは,米iBiquityが開発を手がけたIBOC(In-Band On-Channel)方式の地上デジタルラジオ放送のこと。2002年に米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)が標準規格として認可し,米国で実用化が進んでいる。

 HD Radioの放送方式であるIBOCは,既存のAM/FM アナログ放送の周波数を利用して,アナログ放送と同時にデジタル信号を伝送するハイブリッド方式を採用している。具体的には,既存のアナログ信号帯域内及び両側のサイドバンドにデジタル信号を付加する方式である。そこから,「Hybrid Digital Radio=HD Radio」と名付けられた(図1)。

図1●「IBOC」の周波数利用イメージ
図1●「IBOC」の周波数利用イメージ
既存アナログ放送の帯域にデジタル信号を付加して,デジタル放送を実現する。

 米国では既存のAM/FMラジオ局がHD Radioによる地上デジタルラジオ放送を始めている。日本の地上デジタルラジオと異なり,既存アナログ放送と同じ周波数を使えるため,放送局は新たにデジタル放送用の周波数を用意する必要がない。従来のアナログ方式のラジオ受信機で既存の放送を受信できると同時に,デジタル受信に対応したHD Radio受信機ではデジタル放送も聴取できる。デジタルで受信した場合には,AM放送ではアナログFM放送並みの音質となり,FM放送ではCD並みの音質となる。

 IBOC方式のHD Radioの伝送符号化方式は,欧州のDVB(Digital Video Broadcasting)と同様のCOFDM(Coded Orthogonal Frequency Division Multiplexing,符号化直交周波数分割多重)を採用。音声符号化方式は,HDC(High Definition Coding)と呼ばれるIbiquityが開発したHD放送用のAudioコーデックを使う。

 HD Radioで伝送されるデジタル信号の伝送レートは,FM放送の場合にHybrid伝送で約100kビット/秒で,最大2チャンネル(プライマリ・ロジカル・チャンネル1:25kビット/秒,プライマリ・ロジカル・チャンネル2:74kビット/秒)を放送できる。また,Extended Hybrid伝送では約150kビット/秒の伝送レートが確保でき,最大3チャンネル(プライマリ・ロジカル・チャンネル1:25kビット/秒,プライマリ・ロジカル・チャンネル2:98kビット/秒,プライマリ・ロジカル・チャンネル3:25kビット/秒)を放送できる。

 また,HD Radioは既存のAM/FMラジオと同じ周波数を利用して共用する以外にも,全の帯域をデジタル放送に利用することもできる。その場合,既存のAM/FMラジオが使用していたアナログ放送領域をセカンダリ・チャンネルとして割り当てることが可能になる。全てをデジタル化した場合の伝送レートは,FMラジオの場合は2倍の約300kビット/秒となる。

 HD Radioを使ったデジタル化により帯域を有効利用できるようになるため,デジタル音声放送と同時に天気予報,交通情報やOn Air情報などの簡易なデータ放送の提供が可能。また,メイン番組とは別に,異なるジャンルの音楽番組などをモアチャンネルとして放送するマルチキャストが可能である。

 2005年12月には,デジタルラジオ・サービスを推進し,新しいサービスの開始に取り組む目的で,米国大手7大ラジオ局チェーンが,HD Digital Radio Allianceを結成した。

 2006年末時点に米国でHD Radioの放送をしているAM/FMラジオ局は,全1万2000局のうち約90%にも達している。

【関連キーワード】
【参考文献】
  • Biquity IBOC White Paper
  • IBOC FM Transmission Specification,August 2001,iBiquity Digital Corporation
  • IBOC AM Transmission Specification,August 2001,iBiquity Digital Corporation