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図1 DRMは試合を見るためにチケットを要求するようなもの
図1 DRMは試合を見るためにチケットを要求するようなもの
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図2 対応する設備もきちんとしないと抜け穴ができてしまう(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 対応する設備もきちんとしないと抜け穴ができてしまう(イラスト:なかがわ みさこ)
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 DRMとはdigital rights managementの略で,日本語では「ディジタル著作権管理」と訳される。音楽や映像のようなディジタル・コンテンツを何の制限もなく使われることがないようにするしくみを指す。コンテンツのコピーを防止する,いわゆる「コピー・ガード」が代表的だ。

 ディジタル・コンテンツは,複製をしても質が劣化することはない。このため,コピーを無条件で許してしまうと,提供側の関与しないところで勝手にコンテンツが利用されてしまうケースが出てくる。結果として,コンテンツ提供者には十分な対価が払われないことになる。こうした事態を避けるためにDRMは利用される。

 例えていうと,観戦チケットを買った観客しかスタジアムには入場させないようなものといえる(図1)。チケットをもっていない人には試合を見せないようにして,提供者側の利益を確保する。

 DRMの基本的なしくみは,コンテンツの内容を暗号化し,それを解読するための鍵をコントロールすることで,コンテンツの利用に制限を付けるというものである。再生するために鍵をネットワーク経由で取得させたり,あらかじめパソコンの中に保存させた鍵を確認することで,コンテンツだけをコピーしても再生できないようにする。

 DRMとして実用されているものは,いくつかある。アップルのオンライン・ストアiTunes Storeで採用する「FairPlay」や,マイクロソフトのWindows Media DRMなどがそうだ。これらのDRMでは,不正なコピーを防止するだけでなく,回数や期間を制限するといった制御も可能である。地上デジタル放送やBSデジタル放送で導入している「コピーワンス」もDRMの一種といえる。放送中の番組を一度だけは録画できるが,そのコンテンツを再度コピーすることはできないように制限されている。

 DRMによる制限は,コンテンツ側だけでは完全な対処はできない。そのコンテンツを再生/録画する機器側でも,きちんと対応することが必須となる。例えば,地上デジタル放送では「1回だけ録画可能」という制御信号を付けて番組を放送している。この信号を受け取ったチューナーが,コンテンツを受信して再生する際に「1回だけ録画可能」という信号を付けて送り,ハードディスク・レコーダーなどの録画装置は,その信号を見て「録画可能」と判断する。その録画コンテンツを再生する際には,今度は「録画可能」という情報を付けないことで,別のレコーダーで録画しようとしてもレコーダー側で拒否する。

 この一連のしくみを実現するには,チューナーやレコーダーなどのすべての機器で対応する必要がある。チューナーがコンテンツを録画制限なしとして渡してしまったり,逆にレコーダー側で制限のチェックを無視して録画するようになっていては,いくら元のコンテンツにDRMで制限を付けてもまったく意味がない。例えば,音楽CDのように貧弱なDRM機能しかないプレーヤが普及してしまっては,パソコンに取り込む「リッピング」などへの対策をあとからしようとしても,なかなか困難である。先ほどの例で言うと,入口のチェックを厳しくしても,スタジアムの設備がまずいために外から簡単に試合を見られてしまうようなものといえるだろう(図2)。