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文・別府 洋美(日立総合計画研究所 社会・生活システムグループ主任研究員)

 2006年6月に成立した医療制度改革関連法に基づき、2008年度から「医療機能に関する情報提供制度」に則った情報提供がスタートします。これにより、厚生労働省から指定された項目についての情報を医療機関が都道府県に提出し、その内容を都道府県がインターネットを使って地域住民に開示するという取り組みが行われるようになります。また行政に提出した情報を、患者が院内でも閲覧できるような環境を設けることも義務付けられます。

 開示される情報は、医療機関名、住所、診療科目、診療時間といった基本的な施設概要に加え、提供している医療サービスや医療連携体制に関する事項、医療の実績・結果に関する事項、駐車場の有無、対応可能な外国語の種類、差額ベッドの数や種類まで金額といった費用面での事項など、病院で56項目、診療所で50項目にのぼります。このように多岐にわたる情報が公的機関から継続的に公表されることは、医療サービスを選ぶ側の住民にとって大きなメリットといえるでしょう。

 これまで、医療機関情報は自治体や医療機関の自主的な取り組みとして公開されてきました。インターネットが広く普及するようになってからは、自治体からは夜間診療受付病院(輪番担当:順番による休日、夜間の重症急患の入院治療に当たる病院)の案内など救急医療体制情報、医療機関からは診療科やアクセス情報などの施設概要が発信されるようになりました。またWebポータルサイトサービスの一環で、医療機関の基本情報検索サービスを提供するプロバイダーが増えたことで、旧来の口コミ情報を超えた情報収集が可能になりました。

 しかしながら、発信される情報はあくまでも自主的な活動によるため、地域や施設によって項目や更新頻度、表現方法の違いなどがあり、利用する側がその差を埋める必要があります。そこで、医療サービスは国民の安全・安心な生活に密接な関係にあるにもかかわらず、医療サービスを提供する医療機関に関する情報開示が不十分であるという長年の課題をうけ、法改正を含む対応がとられることとなりました。

 さらに、この情報は全国レベルで公開されるため、医療政策の立案や、医療機関同士の連携推進にも威力を発揮すると期待されています。

 現在、医療機関では厚生労働省の施策により、強み分野に特化する、いわゆる機能分化が進んでいます。例えば、がん治療はAセンター、手術後のリハビリはB病院、退院後の定期的な診察はC診療所にそれぞれ行けば、医療機関ごとに最適な人材や治療機材の整備が進み、患者は治ゆに向けて効果的な治療を受けることができます。

 一方で患者主体に考えると、1つの病気を治療するのに複数の医療機関にかかる必要がでてきます。この場合、患者が治ゆするまで適切な治療をうけるためには、医療機関同士が連携しあい、切れ目なく必要な医療サービスを提供できる体制が必要となります。今回の改革で提供される医療機関情報は、こうした医療機関同士の連携促進を支えるものになります。医療機関同士だけでなく、患者も参加して情報を活用することで、必要な医療サービスを適切に選択して利用できる環境が整います。

 継続的な医療機関情報の収集や提供、正確性を担保するのは、本制度を実質的にとりまとめる都道府県であり、安全・安心な生活の推進において、都道府県が果たす役割は大きいといえるでしょう。