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文・岡野 高広(日立総合計画研究所 社会・生活システムグループ 研究員)

 広域連合とは、都道府県、市町村、特別区によって構成される特別地方公共団体の制度であり、1995年6月に開始されました。広域連合は、総務大臣や都道府県知事が広域にわたり処理することが適当であると認めた事務に関し、広域計画を作成し、構成団体と必要な連絡調整を図り、総合的かつ計画的に遂行します。現在は主に、介護保険やゴミ処理、広域観光、産業振興などを担っています。

 広域連合制度が創設された背景は2つあります。

 1つ目は、行政サービスを共同で行う枠組みとして従来から存在した一部事務組合制度よりも、さまざまな広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応する必要があったことです。一部事務組合制度では、(1)例えば都道府県と市町村など、権限階層の異なる事務を共同化できないこと、(2)住民による監査請求などができないこと、(3)市町村への強制力がないため規約の変更などに時間がかかること、が課題であるといわれていました。

 2つ目は地方分権が進展した場合の国や都道府県の業務の受け皿が求められていたことです。個々の市町村の境を越えることができる広域連合は、同時期に創設された中核市制度とともに、受け皿の役割を担うことが期待されました。

 広域連合が作成する広域計画では、構成団体である市町村に対して実施の勧告もできます。例えば、広域計画にごみの処分方法について盛り込み、市町村に対してごみの分別方法を変更するよう勧告することができます。このように、広域連合では市町村などに対して広域的観点でイニシアチブを発揮することができます。また、市長など特定の公職に就任すると自動的に他の団体の役職に就任するという、いわゆる「充(あ)て職」は広域連合では禁止されています。広域連合の議員と連合長は市民による直接選挙もしくは構成団体の議会による間接選挙によって選ばれます。さらに通常の市町村と同様に市民からの監査請求や議会解散などの直接請求も可能です。

 2008年4月から、75才以上の高齢者を対象とする後期高齢者医療制度が導入されますが、都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が運営主体になる予定です。これは保険財政を安定化させることを目的としています。例えば、高齢化率の高い市町村が運営主体の場合、保険財政の悪化が予想されます。これに対して都道府県単位の広域連合が運営主体であれば保険財政の安定性が高まると考えられています。後期高齢者医療制度では、広域連合ごとに財政運営や被保険者の管理などが行われますが、住民からの保険料徴収や保険者となる広域連合への情報提供などは市区町村が担います。そのため、市区町村では、広域連合システムとのデータ連携、新制度に対応した健康保険システム、住基システムの変更などが必要とされています。広域連合で情報システムを調達する場合は、電子申請などで多く行われてきた共同アウトソーシングと同様、コスト面でのメリットが見込める一方、自治体間の調整が難題となりそうです。

 2007年4月1日現在での広域連合の設置数は108団体で、そのうち47団体は後期高齢者医療制度の準備のために法令によって設置されたものです。23の都道府県では後期高齢者医療制度の導入時まで広域連合が設置されていなかったなど、これまで広域連合は必ずしも広く活用されていたとは言えませんでした。しかし今後、地方分権が進む中で広域連合が果たす役割は増すのではないかと考えられます。2006年、関西経済連合会と地方自治体が、府県と政令指定都市による関西広域連合の設置を検討しました。2006年、関西経済連合会と地方自治体が、府県と政令指定都市による関西広域連合の設置を検討行いました。現在は、今年7月に発足した関西広域機構(メンバーは関西2府7県4政令市と7経済団体等)が、継続して広域連合の設置について検討を続けています。このように、今後は行政区域をまたいだ広域行政の受け皿として、広域連合の設置について検討も増えてくると思われます。