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文・高畑 和弥(日立総合計画研究所 知識情報システムグループ 副主任研究員)

 ITスキル標準(ITSS:IT Skill Standard)とは、IT関連サービスの提供に必要となるスキルを職種や専門分野ごとに明確化・体系化した指標です。IT人材の能力向上によるIT産業の競争力強化を目指して、2002年12月に経済産業省が策定しました。

 ITスキル標準では、IT関連サービスの職種を「コンサルタント」「プロジェクトマネジメント」「アプリケーションスペシャリスト」など11に分類し、その下に全部で36の専門分野を設けています。さらに、専門分野ごとに個人の能力や実績に基づく7段階の達成度レベルを定義しています。下記の表で色の付いている部分が各職種と専門分野のレベルを示したものです。色の付いてない部分は当該レベルが想定されていないので、例えば一番左側にある「マーケティングマネジメント」については、3段階のレベルしか存在しないことになります。

 ITスキル標準の改定や普及活動については、経済産業省から情報処理推進機構(IPA)に引き継がれており、最新のITスキル標準はIPAのITスキル標準センターからダウンロード可能になっています。現在の最新版は2006年10月に発表された「ITスキル標準V2 2006」で、今後は同センターが毎年定期的にITスキル標準の見直しを行う方針です。

図表●ITスキル標準のフレームワーク
図表●ITスキル標準のフレームワーク
出典:情報処理推進機構「ITスキル標準V2 2006 2部:キャリア編」

 ITスキル標準の導入は、ITベンダー、エンジニア、ユーザーのそれぞれにメリットをもたらします。まず、ITベンダーにとっては、社内の評価制度にITスキル標準のフレームワークを利用することで、自社のエンジニアの能力がどのレベルに位置付けられるかを共通の基準で測ることが可能となります。これにより自社における人材の手薄な分野や強い分野を可視化でき、その内容に基づいてより効率的な人材育成計画を策定することも可能となります。既に大手ITベンダーのほとんどがITスキル標準に基づいた人事評価制度やキャリアパスを設定しています。

 スキルの可視化は個々のエンジニアにとっても利点があります。社内だけでなく一般の労働市場の中で自分のスキルがどの位置にあるのかを把握することで、エンジニアが自分のキャリアパスのイメージを明確化し、その実現のためにスキルをどのように向上させるかを判断するための材料となります。なお、ユーザー企業における情報システム部門の人材のスキルとキャリアを定めたものとして、2007年6月に経済産業省が策定した「情報システムユーザースキル標準」(UISS)があります。

 ユーザー側にとってのメリットとしては、標準化されたスキル体系がIT業界全体で利用されることによって、異なるベンダーが提供するIT関連サービスの比較が可能になることが挙げられます。例えば、ユーザーである地方自治体がITベンダーと契約する際にも「今回の全庁ネットワーク構築プロジェクトではITスキル標準のITスペシャリスト(ネットワーク)のレベル5以上のエンジニアを割り当てること」と具体的に指定することで、どのベンダーと契約しても受けられるサービスのレベルについて同程度の品質が期待できます。

 ただし、ITスキル標準の採用にあたって各ベンダーは自社が使いやすいようにカスタマイズをしているケースが多いので、完全に同じ基準で比較が可能となるわけではありません。また、ITスキル標準に沿ったレベル認定試験があるわけではないので、ベンダーがITスキル標準に基づいたレベルの人材を主張したとしても、そのスキルが客観的に保証されるわけではないことには注意が必要でしょう。