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図1 既存の携帯電話では基地局が遠かったり混雑していたりするとうまく使えない
図1 既存の携帯電話では基地局が遠かったり混雑していたりするとうまく使えない
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図2 フェムトセルではユーザーの都合に合わせて超小型の基地局を設置することで既存の携帯電話の欠点をカバーする(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 フェムトセルではユーザーの都合に合わせて超小型の基地局を設置することで既存の携帯電話の欠点をカバーする(イラスト:なかがわ みさこ)
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 フェムトセルは,超小型で非常に出力が小さな携帯電話基地局がカバーする,半径数十メートル程度の通話エリア(セル)である。「フェムト」は「1000兆分の1」を意味する接頭語で,従来のセルに比べて非常に狭くなることからこう呼ばれる。現在,携帯電話各社は実用化に向けて動いている。

 フェムトセルは,単純に狭いカバーエリアであるだけでなく,配置や利用のしかたも従来のセルと異なる。携帯電話事業者は,利用するユーザーの分布を考慮して,セルを配置してきた。ユーザーが少ない地域には出力が高めの基地局を設置して広いセルを作り,ユーザーの密度が高いところには出力が低めでセルが小さな基地局を多数設置して多くのユーザーが同時に通話できるようにする。携帯電話事業者は,このようなセルを無数に組み合わせてサービスエリアを作る。

 ところが,このように工夫してセルを配置しても,ビルの中や地下などには電波の届かないところが残る(図1)。サービスエリアから外れた山間部のホテルや旅館などで携帯電話を使いたいユーザーもいる。また,電波が届くところであっても,イベントなどの突発的なトラフィック増で携帯電話が使いにくくなることもある。

 フェムトセルは,このようなサービスエリアの穴や能力不足を埋めるために配置されるスポット型のセルである。フェムトセル用の基地局は,FTTHや専用線などを使いTCP/IPでバックボーン・ネットワークに接続するようになっている。同時に通話できる人数も4人程度で,ユーザーの希望に合わせてフェムトセル用基地局を設置するのが基本となる。ユーザーは,自分の住宅やオフィスに基地局を設置してもらうことで,今まで電波が届かなかったり,込み合っていたところでも安心して携帯電話が使えるようになったりする(図2)。

 このようなフェムトセルは,携帯電話事業者にとってもメリットがある。フェムトセルは従来のセルに比べて格段に面積が小さいため,ほかのセルとの干渉をさほど気にする必要はない。携帯電話事業者は,割り当てられた電波の帯域を無駄遣いせずに,ビルの中や地下,ユーザー宅などに小さく取り残されたサービスエリアの穴を埋められるのだ。

 フェムトセルの配置のしかたは,二通りに分かれる。一つは従来のセルと同様に携帯電話事業者が主体になって配置する方法,もう一つはユーザーが主体になって配置する方法である。

 前者は携帯電話事業者が基地局と専用線を用意する。ユーザーが費用を負担する必要はない。ユーザーはほかのセルと同じようにフェムトセルを利用できる。この方法のフェムトセルの配置は2007年秋に始まる。

 一方,ユーザーが主体になる方法は,ユーザーにとっての使い勝手が今までのセルと大きく異なる。ユーザーはフェムトセル用基地局の費用を負担し,自分のブロードバンド回線を使って携帯電話事業者のバックボーンにつなぐのが基本である。一部の携帯電話事業者は,家電量販店でフェムトセル用基地局を販売して,それをユーザーのFTTH回線につないでもらうといったことを考えている。事業者によっては,フェムトセルを利用したときの通信料金を割安にしたり,利用できるユーザーを設置したユーザーとその関係者に限定したりする可能性もある。

 ただ,ユーザーが主体になって設置する方法は,今すぐ使えるというものではない。法制度上,ユーザーの都合で気軽に基地局を設置することは許されていないのだ。現在のところ携帯電話の基地局は,1台ごとに免許を取得して,設置場所から,向き,出力に至るまで免許で指定した細かな条件に合わせる必要がある。また,通話品質を確保するため,基地局と携帯電話事業者のネットワークの間にユーザーのブロードバンド回線は使用できないことになっている。信頼性を維持するために無停電電源装置を設置する必要もある。

 一部の携帯電話事業者は,ブロードバンド回線を利用したフェムトセルの実証実験で得られた結果を基に,問題の起こらない範囲で規制を緩和してもらおうとしている。実験が順調に進んで問題がないことが確認できれば,2008年にもユーザーが自身の判断でフェムトセル用基地局を設置できるようになりそうである。