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事故などの失敗情報を分析し、同じ問題を繰り返さないように共有するための取り組み。「失敗学会」などの団体や企業が失敗情報の活用研究に取り組んでいる。

 失敗は当事者にとってはうれしいことではありませんが、その内容を分析し、汎用化できる知識に昇華することによって、問題の再発を防止し、安全で豊かな社会を築く一助になります。過去の失敗情報を活用して、事故や人災などの発生防止につなげるための研究を行う「失敗学」が、社会に広く認知され始めたのは2000年です。この年に東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏が著した『失敗学のすすめ』(講談社)は、「原因究明」「失敗防止」「知識配布」の3つのフェーズで過去の大事故や企業不祥事の事例を分析し、失敗の本質を究明したり、それを組織内外で伝承したりすることの重要性を説き、ベストセラーとなりました。

効果◆失敗情報を共有

 2002年には畑村氏を会長にNPO(特定非営利活動)法人失敗学会が組織され、現在個人・法人会員を含めて1200人の会員が活動をしています。年2回の大会には雪印乳業や動力炉・核燃料開発事業団(動燃、当時)など、大きな事故を起こした企業の当事者による分析や失敗防止策の策定状況を聞いています。

 これに加えて、月次の懇談会や4つの分科会活動でも、会員間で失敗情報の共有を図っています。2003年からは、各年の「10大失敗」を分析した『失敗年鑑』を出版するなどして、体系的に知識化された失敗情報の共有を進めています。

 同学会のユニークな活動の1つに「ゲームと失敗学」分科会があります。学会の活動を通じて収集された失敗学の知識を、クイズ仕立てでインターネットで会員に公開しています。楽しみながら、仕事に役立つ失敗学を身につけられる効果があります。

 独立行政法人科学技術振興機構(JST)では畑村氏の監修のもと、機械、材料、化学物質・プラント、建設の4分野で1000件以上の失敗情報を集めた「失敗知識データベース」を作成し、インターネットで公開しています。失敗の原因、行動、結果を分類して体系化した「失敗まんだら」と、失敗に至る脈絡を記述する「シナリオ」を併用します。

事例◆小さな「予兆」を把握

 過去に大きなトラブルを経験した企業を中心に、失敗学を学び実践する機運は高まっています。2004年に東京・六本木ヒルズの回転扉事故で死者を出した森ビルは、けがに至らなかった小さなトラブルまで、事故の「予兆」ととらえて情報を収集し、全社で共有する「ビル速報」というシステムを構築しました。各部門から寄せられたトラブル報告を一元管理し、設計担当部門のコメントや改善履歴などと一緒に、全社の管理職が閲覧できるようにしました。この結果、ビル内で転んでけがをする人の数が減るといった成果を生んでいます。