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図1 ISDB-Tmmで利用予定の帯域と放送形態
図1 ISDB-Tmmで利用予定の帯域と放送形態
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図2 ダウンロード型放送と課金のしくみ
図2 ダウンロード型放送と課金のしくみ
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表1 ISDB-TmmとMediaFLOの比較(総務省の懇談会資料や各社資料を基に作成)
表1 ISDB-TmmとMediaFLOの比較(総務省の懇談会資料や各社資料を基に作成)
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 ISDB-Tmm は,地上デジタル放送方式の「ISDB-T」から派生した携帯端末向け放送方式である。ワンセグよりも高画質なストリーム放送や,映像コンテンツのダウンロード・サービスなどの新しいサービスの実現を目指している。2008年3月から試作機によるフィールド実験が東京タワー近辺で行われている。

 新しいサービスは,2011年7月に予定されている地上アナログテレビの放送終了に伴って“空き地”となる周波数の一部を有効利用するもの。総務省は2007年7月から「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」を開催し,放送方式や事業主体,サービス形態などを検討している。その放送方式の一つがISDB-Tmmである。

 ISDB-Tは,テレビ放送の1チャンネル分の帯域(6MHz幅)を14のセグメント(429kHz幅)に分割して,このうちの13セグメントを使って放送サービスを実現する。現在は,12セグメントを使ったHD(高精細)品質のテレビ受像機向け放送や,1セグメントを用いた携帯端末向け放送(ワンセグ)があり,UHF帯の周波数を使って同じ番組を同時放送(サイマルキャスト)している。

 これに対し,ISDB-TmmではVHF帯の14.5MHz幅(207.5M~222MHz)で,ISDB-Tと同じ429kHz幅のセグメントを使って放送サービスを実現する。さらに,その割り当てを固定せず,自由に割り当てられるようにする。セグメント数も変えられる。セグメントごとに変調方式や誤り訂正方式などの仕様も選べる。こうすることで,さまざまな番組(コンテンツ)やサービスをまとめて効率よく放送できるようになっている(図1)。

 ISDB-Tmm では2種類の放送形態を想定している。一つは「ストリーム型放送」で,もう一つは「ダウンロード型放送」である。ストリーム型放送はワンセグと同じように,流れてくるコンテンツをリアルタイムに視聴する形態である。一方のダウンロード型放送は,ニュース・クリップなど短い時間のコンテンツをあらかじめ携帯端末に配信して蓄積させておき,ユーザーが好きなときに蓄積されたコンテンツを視聴するというものだ。

 ただし,携帯端末は常に電波を受信できる状態にあるとは限らない。そこでダウンロード型放送では,コンテンツを複数のデータに分割して,それを配信単位とし,同じデータを一定時間繰り返して配信する方法を検討している。こうすることで,受信端末が任意のタイミングで必要なデータを取得できるようになるわけだ(図2)。

 ダウンロード型放送では,有料コンテンツも扱えるようにする。携帯電話網と連携した課金のしくみを用意し,ユーザー認証や暗号鍵など課金に必要な情報を携帯電話網を使ってやりとりして実現する考えだ。

 なお,総務省の懇談会では,米クアルコムが開発した「MediaFLO」も検討方式の一つである。米国ではすでにMediaFLOを使った携帯端末向け放送が始まっている。携帯電話事業者の米ベライゾン・ワイヤレスが有料の放送サービスを2007年3月から提供中で,この5月には最大手の米AT&Tもサービスを開始した。

 ISDB-TmmとMediaFLOを比べてみると,基本となる技術に差はない(表1)。MediaFLOにもダウンロード型放送や課金のしくみはある。総務省の懇談会の資料でも「優劣や大きな差はない」とされている。

 両方式で違うのは帯域の使い方である。MediaFLOは広い6MHz幅の中でコンテンツごとに最適な帯域を動的に割り当てる。統計多重効果によって周波数利用効率を高める。これに対し,ISDB-Tmmは429kHz幅という狭い帯域を単位としてコンテンツに割り当てていく。こうすることで,14.5MHz幅でさまざまなタイプのサービスを実現する。