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文・藤澤 浩之(NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部 シニアコンサルタント)

 「次世代電子行政サービス基盤」とは、さまざまな行政手続きのワンストップサービスを提供するための情報システムを中心としたインフラ基盤であり、国・地方・民間企業を含めたシームレスな電子行政の実現を目指す次世代の電子行政サービスの根幹となるものです。2007年10月に内閣官房IT担当室電子政府推進管理室に発足した「次世代電子行政サービス基盤検討プロジェクトチーム」が中心となり検討を進めています。

 「次世代電子行政サービス基盤」が出来上がり、行政サービスの電子化・ワンストップ化が進むことで、利用者側に様々な利便性向上が期待できます。証明書などの添付書類の簡素化・不要化、複数機関・複数回の訪問の不要化、手続に係る申請様式・方法の標準化、携帯電話・KIOSK端末・地上デジタルテレビなど身近な手続きチャンネルの拡大などです。

 検討の直接の契機となったのは、2007年に発表されたIT新改革戦略政策パッケージ(平成19年4月5日IT戦略本部決定)及び重点計画-2007(平成19年7月26日IT戦略本部決定)です。本計画において、「様々な行政手続を基本的にワンストップで簡便に行える次世代の電子行政サービス基盤の標準モデルについて2010年度を目途として構築する」ために、内閣官房IT担当室電子政府推進管理室に「官民合同の検討プロジェクトチームを発足する」ことが発表されました。そこで発足したのが「次世代電子行政サービス基盤検討プロジェクトチーム」です。

まずは引っ越しワンストップ、退職ワンストップから着手

 計画ではまず、多くの利用者が見込め、かつ行政や民間、個人や企業が関わる網羅的なライフイベントである「引っ越し」と「退職」をワンストップ化の標準モデルとして基盤の構築を進め、その他のライフイベントを順次ワンストップ化していく予定です。

 最終的には、この取り組みを通じて、行政手続きのワンストップ化に留まらず、究極の電子社会に向けた進化を継続することで、日本社会をイノベーションの連鎖を生む知識創造の社会へと導くことを目標としています。

 検討チームでは、ワンストップの標準モデルとなる典型的なライフイベントとして、個人では引っ越し手続を、企業では退職手続を選定しました。そして、手続面や技術面での詳細な検討、利用者視点に基づく行動フローの分析やニーズの把握等を行い、2008年6月に「次世代電子行政サービスの実現に向けたグランドデザイン」を策定しました。

図1●次世代電子行政サービス基盤のイメージ図
出典:次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン

 今後は、本グランドデザインを元に、引っ越し・退職手続のワンストップ化を先行プロジェクトとしてフィールドでの実証実験を行い、実用化に向けた環境整備等の枠組みの構築を行って、2010年度にワンストップ電子行政サービスの標準モデルを構築し、その後の実用へ向けて取り組みを推進する予定となっています。

引っ越しワンストップ
 現在、引っ越し者は、免許、印鑑登録、自動車登録、国民年金、電気・ガスなどの手続きを個別に行う必要があり、最大で7機関(官民含む)の訪問において、13種類の添付書類が必要となります。

 引っ越しワンストップにより、転入先の市町村に訪問するだけで手続きが完結できるようになります。さらに、添付書類を大幅に削減することで、官民あわせて約1000億円のコスト削減効果(人件費にかかる作業時間)を政府は見込んでいます。

退職ワンストップ
 現在、従業員が退職する場合、多くの行政手続きが必要です。企業は従業員の、健康保険、厚生年金、雇用保険、国税、地方税に関する手続きを、従業員は勤務先の変更・離職に伴い、健康保険、国民年金、失業等給付、老齢給付に関する手続きを行う必要があり、両者を合わせると最大で6機関以上の訪問において、15種類の添付書類が必要となります。

 退職ワンストップにより、必要な訪問機関は、失業等給付を受ける場合に従業員が公共職業安定所を訪問するのみとなります。また、添付書類を大幅に削減することで、政府では官民あわせて約1200億円のコスト削減効果(人件費にかかる作業時間)を見込んでいます。