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 顧客の要望に応えて製品やその仕様をカスタマイズしつつも、マス(大量)に生産するという考え。大量生産のスケールメリットと顧客志向の両立を目指す。

 「マス・カスタマイゼーション」とは大量生産と受注生産という2つの概念を両立させるものです。前者は量を追うことで生産コストを下げられます。一方、後者は個々の顧客の要望に対応するためコストはかかりますが満足度の高い商品を提供でき、付加価値を引き上げやすくなります。

 多品種少量生産に近い考え方ですが、単純に製品ラインアップを増やすものではありません。生産や物流現場でのプロセス改革やIT(情報技術)活用があって初めて実現できるのです。

 この言葉が広まり始めたのは1990年代前半です。『マス・カスタマイゼーション革命─リエンジニアリングが目指す革新的経営』(ジョー・パイン著、日本能率協会マネジメントセンター)という翻訳書が94年に出版され、知られるようになりました。

効果◆SCMの理想形

 顧客の声を聞く「マーケットイン」の考え方が有効な市場では、マス・カスタマイゼーションによって販売増に結び付く成果が期待できます。自動車やアパレル、パソコンなど多くの業種が取り組んできました。実現手段として一般的なのは、半完成品を作りだめしておき、注文が入ってから、カスタム仕様の部分を付け加えて完成品を出荷するというSCM(サプライチェーン・マネジメント)体制です。

 例えば、米デルは、CPU(中央処理演算装置)やハードディスク装置(HDD)などパソコンの主要部品ごとに数パターンの選択肢を用意しておき、顧客にウェブサイト上で仕様を選んでもらいます。受注してから基板にCPUを搭載しHDDを接続するなどして完成品を組み立てます。こうしたBTO(注文生産)と呼ばれる手法をいち早く取り入れて成長に結び付けました。

 ただし、マス・カスタマイゼーションといえども、むやみに顧客の声を聞き過ぎると、多くの部品在庫を抱える羽目に陥り、コスト増になって儲かりにくくなります。

 マス・カスタマイゼーションは、製品の特性や顧客の要望に応じて取り組むものです。生産に関する言葉であると同時にマーケティング用語でもあるのです。

事例◆お菓子や造船業界も取り組む

 日本の製造業は80年代から徐々にマス・カスタマイゼーションを目指してきました。米国で研究されて国内でも再評価されるようになった趣があります。例えば、江崎グリコは今後の課題として実践に意欲を見せています。三菱重工業の造船部門でも「高い付加価値のある船種でマス・カスタマイゼーションの考えを取り入れているところ」(同社広報・IR部)です。