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 自分との対話の技法。日常生活の中で漠然と感じるモヤモヤや違和感と向き合い、言語化や象徴化していくプロセスを繰り返すことで、安心感や解放感を得ていく。

 うつなど、社員のメンタルヘルスが企業の重要な経営課題として認識されるようになっています。こうした問題を未然に防いだり、早期に解決したりするには、仕事や職場のコミュニケーションにおけるストレスの軽減が急務ですが、一方で社員自身が自分と「対話」し、問題や心配ごととうまく付き合うスキルを習得することも重要です。

 こうした手法の1つがフォーカシングです。日常的に感じる漠然とした違和感やもやもやした感じなどを無視したり、短絡的な解決法を当てはめたりするのではなく、丁寧に向き合ってイメージや言語で象徴化していく過程で、「ああ分かった」というすっきり感や安心感、解放感を生み出します。1960年代に米国の心理学者が提唱したこの手法は、日本でも心理療法やカウンセリングに広く用いられ、近年では、職場のメンタルヘルス対策やコミュニケーション改善の面でも注目され始めています。

効果◆自ら気づきを得る

 フォーカシングでは、言葉やイメージにならない「感じ」を「フェルトセンス」と呼び、フェルトセンスを言語やイメージなどによって「象徴化」するプロセスを繰り返すことで、自ら気づきを得るよう促します。フォーカシングに詳しい東京女子大学文理学部心理学科の近田輝行教授は「体で感じる痛みや感覚から逃げるのではなく、きちんと向き合い、自然に言葉やイメージがわき出してくるのを『待つ』ことで、受け入れられるようになる」と話します。1人で行うセルフフォーカシングのほか、聞き手と2人で対話するのも効果的です。

 例えば気がかりや心配がある時、無理に「大したことではない」と否定するのではなく、「何がこんなに嫌なのだろう」とフェルトセンスを確かめ、ぴったり合った言葉やイメージを探っていきます。思い浮かべた気がかりの一つひとつに名前やラベルをつけ、机の引き出しに入れたり、遠くの山に置いたりといったイメージを想起すると、それらの気がかりから距離を置いたことが実感でき、ほっとして楽になったり、問題に対する感じ方が変わったりするのです。

事例◆管理職研修に導入

 フォーカシング指向心理療法を研究する関西大学文学部の池見陽教授は、ダイハツ工業などでフォーカシングを基盤とした管理職向けのメンタルヘルス研修を行っています。「部下の話を聞き、部下が感じていることを言い表し、部下が感じていることを理解することは、ストレス性疾患の予防になるばかりでなく、業務においても、創造的な問題解決や人間関係における相互理解につながる」と企業が導入する意義を説明しています。