米国の選挙で使われている有権者に対するデータマイニング手法。統計分析ソフトを用いて有権者の特性を調べて支持者獲得のキャンペーン立案・実行に役立てる。
米大統領選挙が佳境に入っています。民主党のバラク・オバマ氏、共和党のジョン・マケイン氏のいずれかが2008年11月に大統領として選出され、翌2009年1月に就任します。支持者の取り込み策として注目を集めているのがマイクロターゲティングです。2004年の大統領選から導入されました。
公開されている国勢調査の結果や有権者の登録情報、販売されているクレジットカードの購買履歴などを基に有権者一人ひとりの趣味・嗜好を分析して、それぞれに適した訪問や電話、メール、手紙といった訴求方法で、最適の政策を訴えるというものです。
例えば、保有する自動車がハイブリッド車であれば、環境問題に関心を持つ可能性は高いし、収入が低く子だくさんの家庭では教育の補助金に興味があると考えられます。
NRA(全米ライフル協会)のような全国規模の組織が支持者としてマクロ(大規模)のターゲットとすれば、有権者一人ひとりはマイクロ(微量)のターゲットです。マイクロターゲティングでは、豊富なデータの分析に基づくキャンペーンで個々の有権者から支持を取り付けます。
効果◆最適な選挙活動を示唆
単純な類推だけではありません。民主党と共和党は、性別や家族構成、年収、購読雑誌、人種、宗教、飼っているペットなどあらゆる個人情報が詰まった巨大なデータベースをそれぞれ持っています。このデータを米統計分析ソフト大手のSPSS社の製品で分析することによって、有権者の投票行動や関心事を探り当てます。
個々の有権者の分析結果をデジタル化された地図情報のGIS(地理情報システム)と組み合わせると、地域ごとで関心を持ってもらいやすい政策や効果的な選挙活動を割り出せます。分析作業やその結果を基にした戦略立案には専門の政治コンサルティング会社が手を貸します。
動向◆選挙版のCRM
米国大統領選挙の歴史の中でも、今回は最も多くの寄付金が両陣営に流れ込む見込みです。データベースの整備や統計分析に費やす資金は潤沢にあります。経営の世界から転用されながらもマイクロターゲティングは企業のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)より技術的に先を行くかもしれません。最近になって「選挙版CRM」という意味でVRM(Voter Relationship Management:有権者情報管理)という言葉も米国の報道で使われていました。マイクロターゲティングを念頭に置いたものです。
個人情報の取得が難しく、候補者の政策が必ずしも争点にはならない日本ではすぐに普及することはなさそうです。