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 「人は必ずしも合理的に物事を判断して行動するわけではない」という前提に基づいて消費者心理を分析し、人の購買行動や意思決定を研究する学問のこと。

 店頭にズラリと並べられたベビーカーの展示を前にして、顧客はどれを買えばよいか分からなくなり、結局どれも買わずに帰ってしまった。そこで識者が一言。「商品の選択肢が多いほど、人はよりよい買い物ができるように思えます。しかし、選択肢が多くなり過ぎると、人はむしろどれも選べなくなる傾向があります」

 これは、2007年に放映された大和証券グループのテレビCMの一幕です。人の購買行動や、その行動に影響を与えている心理的な要因、人の習性などに注目して研究する行動経済学の教授が、冒頭の場面を解説しています。この現象は行動経済学の中でも、葛藤下の選択理論による「決定回避の法則」と呼ばれています。同じように、大和証券グループの別のCMでは、新たな商品を購入したいという意欲があっても、選択肢が増えると人はかえっていつも通りの商品を選んでしまう傾向がある「現状維持の法則」も紹介しています。誰にでも心当たりがあるのではないでしょうか。

効果◆人の心理に売れる糸口を発見

 古典的な経済学では「人は自分が最も得する(最も満足する)選択をする」ことが前提になっています。そして、この前提は変化しません。ところが、人の購買行動を観察してみると、とても合理的とは思えない行動によく出くわします。そこには人の心理が深く影響していると考えられるのです。行動経済学は、経済学に心理学の視点を持ち込み、実際の行動に照らして人を観察するのが特徴です。

 行動経済学でよく知られる例の1つが「フレーミング効果」でしょう。人は同じ内容でも、その時の状況によって異なる受け止め方をする現象を指します。大和証券グループのCMでも「給料の20%を貯金してみなさい」と言われた若者が「それは無理だ」と答えたのに対し、「給料の80%で暮らしてみなさい」と言われると、「それならやってみる」と受け入れの姿勢を示すやり取りが紹介されています。同じ内容を指すのに、表現の仕方によって人の回答や判断は変わってくるわけです。人の意思決定が常に合理的とは限らないことが分かります。

動向◆飲食店などで手軽に実践

 行動経済学のヒントは日常生活の中にあふれています。トライ&エラーで消費者に商品を訴えかける試みが既に始まっています。例えば、飲食店では売り込みたいメニューを中心に3つの価格を用意し、意図的に顧客を真ん中の価格に誘導することがあります。これは「人が極端な選択を嫌い、中間を好ましく思う」心理を巧みに突いた例といえます。

■参考文献
『行動経済学 経済は「感情」で動いている』(友野典男著、光文社刊)