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文・小池 瑠奈(NTTデータ経営研究所 ソーシャルイノベーション・コンサルティング本部 コンサルタント)

 免震床とは、建造物の工法である免震構造を床面だけに応用した、地震の揺れを軽減させる地震対策装置の一つです。免震構造以外の建造物であっても免震床を導入することで、設置箇所に免震性を備えることができます(図1)。

図1●免震床の構造
図1●免震床の構造
写真は日立機材の製品。手前が固定部で、奥側の支柱群はボールベアリングが付いた免震フレームに載っている。ダンパーにより建物から伝わる揺れを吸収し、コイルばねの復元力で元の位置に戻す。設計価格は100平方メートルで2000万円程度。
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 揺れに非常に弱い形状のディスプレイや、排熱のため壁と密着させられず底面の固定しかできないサーバーラックは、固定した際の安定性の問題から比較的大きな地震の際に転倒しやすい機器といえます。このような転倒防止策のとりにくいICT関連の精密機器の地震対策として、免震床は注目されています。

機器の転倒・損壊を防ぐ免震構造

 建造物に対する地震対策には、3つの代表的な工法があります。具体的には、(1)建造物の強度を上げて揺れに強くする「耐震」、(2)揺れた際に建造物が変形することを抑える「制震」、(3)揺れが建造物自体に伝わることを軽減する「免震」です(表1)。免震床は、この免震工法に由来しています(図2)。

図2●免震床と免震工法の比較
図2●免震床と免震工法の比較
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表1●建造物における地震対策構造の種類
耐震 制震 免震
構造 構造自体を強化することで建造物全体の強度を確保 建造物の内部(壁など)にダンパーなどの緩衝材や特殊機構を設置 地盤と建造物との間に積層ゴムや滑走機などの特殊機構が内蔵された土台を設置
機能 揺れに耐え、倒壊しない
(ほとんどの建造物に適用されている)
建造物の構造を変形させようとする力を減衰 土台が揺れを吸収する、または揺れを建物に伝わりにくくする
(実際の揺れを1/3~1/10に軽減)
メリット ・倒壊しにくいので、建造物内にいる人は安全 ・変形による倒壊がないので、建物内の人は安全
・蓄積するダメージが軽減されるため、建造物機能を維持することが可能
・導入後に機構のメンテナンスが不要
・建造物全体に伝わる揺れを軽減できるため、人だけではなく、建造物内部にある家具や機器を守ることが可能
・建造物へのダメージを大幅軽減
欠点 ・建造物が地面と同程度に揺れるので、建造物内部で家具や機器などが転倒する
・建造物にダメージが蓄積し、壁や梁(はり)などが損壊
・建造物の耐震性を上回る地震が発生した場合、構造が変形し、窓が割れる、ドアが開かなくなる現象が発生
・耐震よりも揺れを抑制できるが、高層建造物の上部になるほど大きく揺れる=建造物内部での地震対策が別途必要(固定具を使用するなど)
・機構が対応しない方向の揺れには制震性が発揮されず、建造物はダメージを受ける
・設置費・点検費など、コストが総じて高額
・強固な地盤や建造物自体が揺れ動くスペースなどが必要であるため、設置可能な土地が限られる
・免震構造単体の導入は難しい
※各構造の設計/施工業者や、導入する建造物の条件によっては当てはまらない場合もある

 免震が耐震や制震と比べて優れている点は、家具や機器の転倒・損壊による被害を抑制できる点です。免震構造によって建造物の揺れが軽減されると同時に、その内部に配置された物体の揺れも軽減されるため、固定具を使用していない家具や特に固定の難しい機器類が転倒したり損壊したりしにくくなります。また、収納物は容器や棚が安定している限り、突出や破損が発生しません。その結果、建造物内部の被害が最小限ですむため、被災直後でも通常の業務を早急に再開できます。