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 私はパンドラの箱を開けてしまったのだろうか。パソコンでゲームばかりをしているかずに,コンピュータはゲーム機ではなく,もっとクリエィティブな機械で創造性や思考力を育てるのだと伝えたくて「マインドストームをするぞ」と声を掛けたのが1月11日。数日たった今,私は少し後悔している。毎日,かずが「マインドストームやろう,やろう」と誘いに来るのである。

 忘れていた。かずは疲れを知らない。疲れたと自覚する前に,どこでも眠ってしまうので疲れるという感覚を本当に知らない。そして何より,こうしろうと違いひま。今時の小学生にめずらしいほど,ひまなのである。平日は学校から帰ってきて,宿題をチョロと片付けたらもう,ひま。週一回月曜日にプールに行って,ひと泳ぎ。それ以外に決まった予定はない。いつも「かず,ほのちゃん,見とって」と妹のお守を仰せつかっている。

 また近頃は学校完全週休2日制に加えて,ハッピーマンデーとかで年に何度も3連休がある。父は3連休を持て余してしまい,土曜は仕事に行こうとか,月曜日は家で原稿を書こうとか,ついつい働いてしまうのだが,かずはきっちりひま。

 勝手に一人でMindStormsをしてくれる分にはなんの問題もない。しかし,我が家のMindStormsは英語版なので,CD-ROMの中の講師は英語でまくしたてるし,プログラムの開発環境も全て英語。「いま,なんや言うとった」,「これなんて書いてあるが?」と小学5年生のかずには通訳として私が必要なのである。1月11日,12日,13日と連日お茶の間留学状態のかず。14日もやりたそうにしていたが,妻が「平日はダメ」とストップをかけてくれ,難を逃れた。

 その分進行は早い。あっという間に基礎を学ぶトレーニングセンターというメニューを終了した。トレーニングセンターの次はChallenges(チャレンジ)という与えられた課題に挑戦していくメニューが用意されている。こうしろうは,その昔Challengesをスキップして,自由に自分でロボットを作りたいと言った。だから,Challengesを紹介するのは今回が初めてになる。長い間,MindStormsを触ってきたが,結構やっていないことが多いのだ。

 ChallengesはPATHFINDER,ROBO,ACROBOTの3つカテゴリに分かれており,それぞれに星1つから,星4つまでの4段階の難易度の課題が用意されいるので,合計で12のチャレンジが体験できる。きちんと全部やると半年はかかりそうなボリュームである。

 かずは,まずPATHFINDERの「星ひとつです」から挑戦することにした。OutBack Trackerという車を作る。Challengesのお題の説明が,もう一つよくわからないのだが,ハードの仕様としては「モーターを2つ付けた車を作る」,「タッチセンサーを2つ付ける」,ソフトの仕様は「前進し,タッチセンサーが2つとも押されたらバックする」,「片方のタッチセンサーが押されたら,モーターを一方だけ回し,左右に曲がる」多分こんな感じである。

 3連休の最後の日に,かずはこんな車を作った。



 基本通りに,障害物に面でぶつかり,点でタッチセンサーを押す仕組みである。

1月18日 この日はプログラミングから始まった。Challengesに表示されるサンプルプログラムを見ながら「これに足していけばいいがや」,「ここにも書いていかんなん」とかずがプログラムブロックをつなげていく。「そうじゃないだろう」と突っ込んだのがTouchセンサーPress側の処理である。

 「Touchセンサーが押されたら,両方のモーターを止めて,片方のモーターの回転方向を変えオンにする。」かずはこんな風にプログラムを作るのだと主張する。「いや,コンピュータの時間の単位は,人間の時間の単位に比べるずっと細かいから,両方のタッチセンサーが本当に同時に押されたと感知することはまず,ない。だから,両方のモーターを止めてしまうと1つのセンサーが押された後に続いて,もう1つのセンサーが押されることがなくなるので,バックしなくなるよ。」と説明し,モーターの回転方向を逆にするにはreverse directionコマンドがあり,回転方向を設定するにはset directionコマンドを使う,などと口を出したり,手をだしたりしているうちにプログラムは出来上がった。



 プログラムは,ほぼ仕様どおりにできたのだが,ハード側に問題があった。タッチセンサーを押しこむバンパーが,ぶつかると簡単に壊れてしまう。

 かずは粘り強く改良を続け,これでもかという頑丈な仕組みを作った。



 ひまさに裏打ちされたかずの根気に恐れ入った。