PR

 日本にとって、地球の真裏に位置するブラジル。サッカー界での交流は盛んだが、IT業界ではなじみが薄かった。ところが状況は変わりつつある。ブラジル最大手SIer、ポリテックが日本市場の開拓に乗り出したのだ。



 ブラジル日系移民100周年―。1年半後の2008年6月は、両国にとって記念すべき時となる。そうした“お祭り”を前に、IT業界でも日本とブラジルとの交流が活発になりそうだ。国内のITベンダーが注目すべきは、いまや中国、インドだけではないのである。

 実はここ半年の間に、大手ITベンダーの担当者やIT業界の有識者が続々と、丸1日以上の飛行時間を費やしてブラジルを訪れている。直近では、オフショアリング事情に詳しいガートナー ジャパン リサーチ部門主席アナリストの足立祐子氏が、この1月15日から1週間ほどかけて、ブラジルのITベンダー数社を視察する。足立氏は、「中国やインドに次ぐオフショアリング拠点として、ポテンシャルが高いと見ている。代表的なITベンダーの力量がどれほどのものかを、この目で確かめたい」と、ブラジルに赴く狙いを語る。

 2006年9月には、NTTデータの端山毅SIコンピテンシー本部設計積算推進部長と、東京大学大学院工学系研究科の大場善次郎教授が、それぞれブラジルに飛んだ。それに先駆け2006年5月には、三菱商事系のIT関連会社であるアイ・ティ・フロンティア(ITフロンティア)の古川勝博執行役員ITプラットフォーム事業担当役員が、ブラジルに向かった。

共通の訪問先はポリテック

 4氏の訪問先には、共通するITベンダーがある。ブラジルのシステムインテグレータ最大手、ポリテックだ。「グローバルで戦うには、力のあるITベンダーと組むことが必要。新たなパートナー探しの一環として、ポリテックに目を付けた」(NTTデータの端山部長)。

 ITフロンティアの古川執行役員は、「三菱商事のコネクションで、『ポリテックという力のあるITベンダーがある』と聞き、関心を持った」と言う。

 ITフロンティアは、視察やその後の調査を通じて、ポリテックとの協業を決定。日本企業におけるポリテックとの提携企業第1号となった。ITフロンティアはこの1月から、ポリテックから日系人エンジニアを招いている。NTTデータは現在、ポリテックとの協業を検討中だ。

 このほかNECや日立製作所、富士通もポリテック日本法人と接触し、手を組めるかどうか議論しているという。ポリテック日本法人の福山スタンリー代表は、「世界第2位の経済大国である日本からの仕事を獲得することで、グローバルカンパニーの仲間入りを果たしたい」と、日本の大手ITベンダーとの提携を急ぐ。

 従業員約6000人を誇るポリテックの業績は好調。2006年12月期の売上高は前年同期比20%増の5億6697万レアル(約312億円、1レアル55円換算)を見込む。「ハード・ソフトの売り上げがあるIBMやHPには及ばないが、SIだけで見ればメーカー系より当社の方が多い」(ポリテック日本法人の福山代表)。利益については公表しないが、「2001年度から今期まで、前年比平均25%増のペースで伸びている」(同)。2007年内には、米国かブラジルの証券市場に上場する計画。米ナスダックから「上場してほしい」との打診がきている。

超インフレ機に技術力を高める

 ポリテックはブラジル銀行や連邦銀行カイシャ・エコノミカ、FBI(米連邦捜査局)のシステム構築や運用・保守を請け負っている。欧米の大手銀行のブラジル支店向けのシステムや、ヘルスケア業界の基幹システム開発、運用・保守の実績も豊富だ。さらに「スクラッチ開発だけでなく、独SAP製のERP(統合基幹業務システム)パッケージを得意とする技術者約500人いる」と自信を見せる。

 ポリテックの福山代表は、「金融機関に代表される大規模システムの業務アプリケーション開発や、システム基盤の構築に強みを持っている」と強調。金融機関向けのシステムを得意とする理由について福山代表は、「過去の経済事情から、優れたオンラインリアルタイム処理システムを作らねばならず、その時期に情報システム関連の技術力が磨かれた」と語る。

 ブラジルは1980年代、ハイパーインフレに襲われた。「当時は1日で貨幣価値が激変するため、バッチ処理で決済していては国民生活が成り立たなくなる状況だった。そのため決済処理を全面的にリアルタイムへ移行せざるを得なかった」(福山代表)。

 システム開発力の向上に貢献したのは、かつての経済低迷だけではない。「当時の治安の悪さもあって、現金よりもクレジットカードのニーズが高まり、先進国よりも金融インフラのオンライン化が進んだ」(福山代表)。

 ポリテックに限らず、ブラジルのITエンジニアの力量を客観的に測る指標として、米A.T.カーニーの調査「Global Services Location Index」が参考になりそうだ(前ページの表)。これは、システム開発や運用・保守、コンタクトセンターなどを手掛けるサービス拠点として、魅力的な国をランキングしたもの。上位20カ国のうちブラジルは、大学卒業者率や言語能力、労働力の減少リスクなどの観点から見た「People and skills availability」という項目だけで見ると、中国やインド、シンガポールなどに続き第6位を占める。

 「エリートの集まるサンパウロ州立大学には、工学部の人気が高い。機械・電子工学に次いで情報工学の競争率が高いようで、IT業界に優秀な人材が集まる土壌がある」(ポリテックやサンパウロ州立大学を視察した東大の大場教授)。



本記事は日経ソリューションビジネス2007年1月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
同誌ホームページには,主要記事の概要や最新号およびバックナンバーの目次などを掲載しておりますので,どうぞご利用ください。
日経ソリューションビジネス・ホームページ