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 IPAの調査によると、IT業界の人材不足を反映して、大企業より中小企業の人件費が増えていることが分かった。労働生産性は、業種ならソフトプロダクト販売、地域別では関東が高かった。



 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、これまで27回にわたり情報処理産業の経営実態調査を実施している。今回28回目として2005年度の調査報告書がまとまったので、概要について紹介する。

 調査はソフト業、情報処理サービス業の4000社に対して調査票を郵送し、861社から回答を得た(有効回答率は21.5%)。調査は2006年8月に行った。財務諸表を中心に経営・財務の状況を分析しているほか、今回の調査では労働生産性を算出したり、一部の企業にはヒアリングにより生の声を収集するなど、できるだけ経営実態を反映させるようにした。

増収増益だが伸び率は鈍化

 まず情報処理産業全体の2005年度の損益状況を見ると、対前年度比で売上高が0.8%増加し、2003年度から3年連続でプラス成長となった。経常利益は22.6%の増加となり、増収増益となった。ただし売上高の伸び率は、2003年度2.7%、2004年度2.7%に比べて鈍化している。

 同じ情報処理産業でも、大企業(資本金3億円超かつ従業員数が300人超)とそれ以外の中小企業では、経常利益に違いが出た。大企業では売上高が0.5%減少するなか、仕入原価を大幅に縮小させて費用の縮減を図り25.5%の増益となった。一方、中小企業は売上原価・販売及び一般管理費が増加しているが、売上高が2.6%伸び18.9%の増益となっている。

 人件費の上昇については、大企業では1.2%と小幅の増加にとどまっているが、中小企業は大企業を上回る4.1%の上昇となった。

 ヒアリングで声を聞いてみると、人材不足が特に中小企業の人件費の上昇につながった結果と考えられる。「2004年の夏ごろから、人材不足が顕著になっている。それ以前は人材で困ることはなかった」(中小の情報処理サービス会社)といった声が聞かれた。大企業でも「技術者不足で注文を受けきれていない状況」(ソフトプロダクト会社)という意見があった。

借入金は減少、財務内容は改善

 次に情報処理産業全体の2005年度の財務状況を見ると、2005年度末の資産は1.6%のプラスとなった。内訳では流動資産が0.4%減だったが、固定資産は3.3%増加し、中でも投資その他の資産が15.0%伸びた。

 自己資本比率も大幅に上昇するなど財務体質も向上した。2004年度は44.3%だったが、2005年度は47.2%だった。特に中小企業だけを見ると、2004年度の38.1%から2005年度は43.5%に大きく増えた。ちなみに2005年度の非製造業は全体で平均24.3%である。

 借入金依存度についても、大企業は2004年度の12.2%から今回は12.0%と微減だが、中小企業は2004年度の28%から今回は23%へと減少している。特に金利の高い長期借入金を中心に削減しており、自己資本比率の上昇とあいまって、中小企業の財務内容はより健全化していることを示している。


■小林 敏章(こばやし としあき)
 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)参事。大蔵省(現財務省)で金融部門などで勤務し、現在IPAにおいてIT業界に対し金融機関が行う融資に対する債務保証業務を担当。企業の財務分析もその一環


本記事は日経ソリューションビジネス2007年1月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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