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 IT業界はここ数年、「魅力がない」、「未成熟」、「新3K」といった負のレッテルを張られ続けてきた。だが今後は、こうした見方を改めなければいけなくなる。「ユーザー企業の言いなりにならず、価値を提供する企業に変わる」。従来のしがらみを絶ち、過去のビジネスのやり方を見直すソリューションプロバイダが増えている。こうした志を抱く企業の取り組みを見れば必ずや、IT業界維新の胎動を感じるはずだ。



情報技術開発の竹田征郎社長はユーザー企業200社に対し、
一方的に契約形態の見直しを迫った

プロローグ

 お客様へのサービスはあくまでも「人」ではなく、その人を通した「サービス」であり、その「サービスの価値」を成果としてお届けすることが最重要であると強く認識させていただいております。(中略)委任契約を今後、請負契約へと変更させていただきたく何卒ご了承の程、お願い申し上げますーー

 システムインテグレータの情報技術開発(TDI)はユーザー企業約200社に対し、「サービス契約変更」の依頼文書を社長あてで送付した。「人月単価を提示してきたビジネスをやめる」。こう2006年9月5日に宣言したのだ。

 「エンジニアの派遣のようなビジネスを続けることが、我々の使命ではない。利益率もじわじわ減っている。現状のようなビジネスを続けていても将来はない」。TDIの竹田征郎社長は強い危機感を抱いていた。そこでユーザー企業との契約形態を今年3月末までに、派遣や委任といった契約から請負契約へと全面的に移行することに決めた。完成物責任を負うことで、社員に責任感を負わせる。それが技術力の向上につながる。「もっと社員が働きがいを感じたり、夢の持てるプロ集団になる」(竹田社長)。

 「そんなことをしたら、契約を打ち切られる可能性があります」。TDIの社員からは不安の声が多く上がった。「何だかんだ言っても現状のやり方のほうが、着実に売り上げが立ちます」。こうした意見に竹田社長は耳を貸さず、ユーザー企業に“挑戦状”をたたきつけた。「変われない人は説得しても仕方がない。でもまだ目が輝いている社員が5%はいる。こうした人材のために、今変えることが私の使命だと思った」(竹田社長)。

「売り上げが減っても構わない」

 竹田社長はユーザー企業に文書を送るにあたって、社員にこう宣言した。

 「ユーザーの3割から仕事を切られるかもしれない。それでもいい。売り上げが減っても構わない。すべて私が責任を負う」。

 「価値を提供するという我々の想いに賛同してくれないユーザー企業だったら、即刻クロージングしなさい。それで売り上げが落ちてもとがめない」。

 「『生意気だ』とか『お前の会社に何ができる』といわれてもくじけるな。今後6カ月間の提案内容で、当社との契約を解除するかどうか判断するよう伝えなさい」。

 実際に「どんな価値を提供できるのか」と契約変更に疑問を投げかけるユーザー企業もいた。それでも「減るのは2割もない。ユーザー企業の8割以上が契約形態を我々の要望通りに切り替えてくれている」と竹田社長は笑顔で話す。「売上高や社員数など、規模を追うつもりはない。でも中身では負けたくない。我々が業界のリーダーになるんだ、という高い志を持って改革を続けていく」。

 改革に本気になったのは中堅・中小ベンダーだけではない。ITサービス企業最大手のNTTデータも、“リーダーとしての自覚”を持ち始めた。

これまでの“丸投げ”慣習を改める

 NTTデータの挑戦は、システム構築における“丸投げ”からの脱却だ。「開発生産性や当社にとっての採算性、エンジニアの技術力や士気などさまざまな面を改善するため、年内に『セル生産方式』のパイロットプロジェクトを走らせる」。浜口友一社長は宣言した。セル方式は、NTTデータの社員がシステム構築における上流だけではなく、中・下流のソフト開発やテストをパートナーと共同で進めるものだ。

 「当社のエンジニアの開発・テストのスキルが落ちては、モノづくり集団として致命的だ」。浜口社長は危機感を募らせる。「プロジェクトマネジャーやアーキテクトを重視しすぎては、組織としての活気がなくなる。プログラマや運用・保守担当者など、多種多様な能力を備えた集団に変えていきたい」。

 セル方式では、パートナーにも“下請けからの脱却”を迫る。「特定の業務アプリケーションに強いなどの得意技を持ったパートナーとチームを組み、開発を進めていく」(浜口社長)。

 NTTデータがセル方式という新たな開発スタイルに挑む理由について、浜口社長はこう語る。「上流だけを担当して中・下流を他社に任せる方が儲かると誰もが思っているが、本当にそうか。セル方式のほうが当社も今以上に利益が出て、ユーザー企業やパートナーにとっても良いやり方なのではないか」。

 TDIとNTTデータの取り組みは、IT業界におけるさまざまな課題を吹き飛ばそうという志の表れ。IT業界が構造改革に向けて動き始めたことの証しである。



本記事は日経ソリューションビジネス2007年4月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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