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 ある音楽キャンペーンが,紛争の続くスーダン西部のダルフール地区を援助するための資金を集めることを目指している。このキャンペーンで,民間の国際的人権擁護団体Amnesty Internationalは,ソーシャルネットワーキングサービス「MySpace」やブログ界を通じてJohn Lennonのトリビュートアルバムを宣伝するため,新しいウィジェットを活用しようとしている。

 「Instant Karma」と呼ばれるこのキャンペーンでは,U2,R.E.M.,Green Dayなど多数のアーティストがJohn Lennonの曲をカバーした同名のアルバムを売り出す。このアルバムは,米国時間6月12日に店頭で発売され,Appleの「iTunes Store」でもダウンロード販売が開始される。1980年代にアフリカの難民救済のために展開された音楽キャンペーン「We are the World」の現代版ともいうべき今回のキャンペーンは,大量虐殺が行われ何百万人もの難民を抱えるダルフールを援助するために,急速に広がる強い影響力を持つウェブの性質を活用して資金を集めることを目指している(米Bush政権は5月29日,スーダンに対する新たな制裁措置を発表した)。

 今回採用された新しい試みの1つに,「MixTape」というウィジェットがある。MixTapeを使うと,誰でも簡単に,10行分のコードをカットアンドペーストして,音楽プレーヤー,政治的請願書,CDストアを自分のMySpaceページやブログ,ウェブサイトに追加できる。電子商取引サイトを運営するGoodStormが作ったMixTapeは,ユーザーが自分の曲をアップロードし管理できるようにするもので,これによりサイト訪問者は,ページ上のウィジェットから直接曲の試聴や購入が可能になる。Amnestyのキャンペーンでは,MixTapeを使ってアルバムのサンプル曲を聴かせ,それからiTunes Storeにリダイレクトして,ダウンロード購入してもらうという流れになる。その収益はダルフール支援のために使われる。

 Amnestyのインターネットコミュニケーション担当ディレクターSteve Daigneault氏は,次のように語っている。「人は自分のページにアクセサリーを付けるのが好きだ。これはとてもクールで個性があり,しかも非常に役に立つ方法だと思う。友人たちは,あなたのMySpaceページで請願書に署名し,iTunesに行かなくてもアルバムの一部を試聴できる」

 18カ月前に立ち上げられたGoodStormは,慈善活動をテーマとする電子商取引サイトで,MixTapeは5月29日に「プレベータ版」としてリリースされた。Amnestyは,6月第2週にInstant Karmaのウェブサイトを更新してMixTapeのプロモーションを追加するほか,テレビやラジオのコマーシャル,印刷物の広告を通じてアルバムの販売を促進する計画だ。

 しかし,Amnestyの慈善活動は別にして,MixTapeの技術は,ウェブコミュニティーに受け容れられれば,音楽業界にさらなる変化が訪れるきっかけになる可能性があると,業界アナリストは指摘する。SNOCAPなど他企業のテクノロジ同様,MixTapeを利用すると独立系のアーティストやレコードレーベルが楽曲をアップロードして,実店舗に頼ったり,マーケティングに巨額の費用を投じたりすることなく販売することができる。だが,このウィジェットが他と異なるのは,MixTapeの場合,音楽ファンが曲のプロモーションを担うことになり,好きな曲を自分のウェブページで販売して,ごく少額の分け前とはいえ利益も得られる点だ。

 Forrester Researchの主席アナリストJames McQuivey氏は次のように述べる。「この技術では,普通の人々がみんな自分のお気に入りの楽曲の潜在的な小売業者になれる。この技術の強力な点は,音楽を介してコミュニティー感覚を作り上げることにある。その曲の本当の魅力を語るのに,ファン以上に適役はいない」

 だが,マイナス要因もある。人気のある曲には,デジタル著作権管理(DRM)システムを採用せずにオンラインで販売されているものはあまり多くない。DRMは,大量配信や違法な再利用を防ぐためのシステムで,DRMで保護された楽曲は,MixTapeなどのウィジェットを通じて販売することはできない。このため,たとえばR.E.M.の曲とU2の曲を一緒に入れようとしてもできないので,音楽ファンのMixTapeに対するニーズがしぼんでしまいかねない。

 ただし,DRMに対する姿勢が大手レコード会社の間でも変化しつつあると見られる1つの徴候がある。それは,EMI Musicが最近「iTunes」での取り扱いを皮切りに,DRMフリーの楽曲販売を開始したことだ。この傾向が続けば,MixTapeなどのウィジェットがより多くの音楽ファンの間で流行する可能性があると,McQuivey氏は話す。

 これまでにGoodStormは,独立系アーティストやレコードレーベルの曲270万曲を集めたミュージックストアを開設した。これらの曲は,IODA,CD Baby,IRISThe Orchard EnterprisesINgrooves.comからライセンス供与を受けており,人々が合法的に販売できる。

 システムは,次のとおりだ。まず音楽ファンは,GoodStorm Musicで無料アカウントに登録する。承認されれば,最大100曲まで収めたMixTapeを好きなだけ作成できる。MixTapeには,GoodStormのコレクションや,自分が個人的に制作した曲や著作権を有する楽曲から自由にアップロードして収録できる。こうしてできあがったMixTapeは,どのウェブページに追加してもいい。このMixTapeから誰かが曲をダウンロード購入したら,売り手である音楽ファンには1曲あたり5セントが入ることになる。楽曲の売買には,PayPalのシステムが用いられ,暗号化はVeriSignが行なう。したがって,ページを訪れた人が,GoodStormコレクションの曲が10曲入ったアルバムを購入すれば,売り手には50セントが手に入る。

 しかし,これに比較して,アーティストや著作権所有者が受け取る金額は驚くほど高い。GoodStormが管理する楽曲は,アーティストあるいはレコードレーベルがアップロードしている。誰かがあるMixTapeから曲を購入すれば,アーティストまたは著作権所有者は,1曲につき65セント,つまり10曲入りの標準的なアルバムなら6.5ドルを受け取ることになる。同じ1曲のダウンロードで,MixTapeを作ったファンが受け取る売り上げは5セントだ。

 GoodStormは,同社ウェブサイトから,アーティスト,レーベルおよびファンに対してリアルタイムで販売数と売り上げの結果を提示している。同社は,MixTapeのテクノロジに関して特許を申請中で,1曲売れるたびに29セントを受け取る。さらにGoodStormは,チケットや商品に加えて広告も販売する計画だ。

 GoodStormの共同設立者Yobie Benjamin氏は,「この技術は,ファンや小規模のレーベルが利用する場合は無料だが,Warner Music GroupやEMI,Sony BMG Music Entertainmentなどの大手音楽会社には無料ではない。われわれはこうした企業がこの技術のライセンス契約を結ぶことになると見ている」と述べた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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