今回で5度目の発行となる「ソフトウェア開発データ白書」は、ソフト開発プロジェクトの実態を解明するために、多くのデータを収集して徹底分析した本である。定量データの収集・分析に関しては、22社の協力を得て、2327件ものプロジェクトを対象にしている。
データの収集と分析は、情報処理推進機構内に2004年に設置された産官学協同のソフトウェア・エンジニアリング研究機関「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」(略称:IPA/SEC)が実施。著者陣には、経験が豊富なエンジニアを揃えている。
内容は、システム開発における最大の課題である“QCD(品質、コスト、納期)”に焦点を当てている。様々な開発指標をクロス分析し、「適切な工期とは何か」や「品質と外注率の関係」などを明らかにしている。これらのデータと自プロジェクトのデータを重ねて見ると、他に比べて生産性が高いのか低いのか、テストの工期は同種のプロジェクトに比べて十分なのか、などを知ることができる。また、今進行中のプロジェクトであれば、実施中の工程の終了判断や、その先の工程の見直しの手掛かりが得られるだろう。
編集の際には、グラフや表組みを用いて、分かりやすい、探しやすい、読みやすい誌面作りを心がけた。棒グラフや円グラフ、分布図や箱ひげ図など、実に600点以上の図表を用いて、読者に可能な限り分かりやすく情報を提供している。
ある調査によると、定量的な管理を行なったプロジェクトの成功率は、それを行なわないプロジェクトの成功率の実に2倍に達しているとのこと。同時に、定量的なプロジェクト管理を実践する企業の数が、2003年から2008年の5年間で2倍近くになっていることも報告されている。この白書は、より効率的なソフトウェア開発を達成する有効な“ツール”となるはずだ。
なお、本年度版では、生産性の新しい切り口として信頼性要求レベルと生産性、母体規模の工数への影響を分析。同時に、テーマ型分析で新たにPM スキル別生産性を記載、工程別の分析に要件定義工程、レビューの工数を追加した。
ソフトウェア開発データ白書2009
独立行政法人 情報処理推進機構ソフトウェア・エンジニアリング・センター著
日経BP社発行
4200円(税込)