PR

 電話網の見直しから始まった商談だ。最初は、技術者として担当していたが、営業責任者に抜てき。既存ベンダーとの一騎打ちに勝つため、逆提案で勝負に出た。

=文中敬称略


 「技術的な疑問点はすべて払しょくできたはずだ」。日本コムシスのITビジネス事業本部法人営業部法人第二営業部で担当部長を務める七條隆輝は、2007年11月、茨城県下妻市の筑波サーキットでの検証を終え、強い手応えを感じていた。

 検証したのは、筑波サーキットを運営する日本オートスポーツセンターの、ネットワークインフラである。サーキット内の電話網を中心とする、ネットワークの再構築案件を受注するのが七條の狙いだった。

 筑波サーキットは、鈴鹿サーキットや富士スピードウェイといったモータースポーツの主要拠点の一つ。毎週のようにレースが開催され、自動車のテスト走行などにも利用されている。

断線が頻発し再構築へ

 「ネットワークの老朽化がひどい。せめて音声品質だけでもなんとかならないだろうか」。日本オートスポーツセンターの業務部長である小森谷勝身が、初めて日本コムシスにこう相談したのは2006年秋のことである。

 日本コムシスに声をかけたのは、日本オートスポーツセンターの他のシステムを構築した実績があったからだ。既存のネットワーク構築を手掛けたNIerのA社にも同様の相談を持ちかけていた。

 小森谷の悩みは深刻だった。当時の筑波サーキットの電話網は、25年前に敷設したメタル回線である。ケーブルの老朽化が激しく、2000年ころから通話音質が低下。2006年からは、回線そのものの切断が多発していた。利用していない芯線で代替していたが、空いている芯線がほとんどなくなっていた。

 問題はこれだけではない。既存ネットワークは、サーキットのあちこちに設置している監視ポストへ情報を配信するシステムや、サーキット場内への一斉放送にも利用する。

 これらのシステムは、レース事故などの緊急時にも使う。いつまた断線するかもしれないという状況は、保守担当者の負担を増大させていた。最悪の場合には、筑波サーキットでのレース開催に影響を及ぼす可能性すらある。小森谷は率直に「現場から悲鳴に近い声が上がっている。看過できない状況だ」と日本コムシスの営業担当者に伝えた。



本記事は日経ソリューションビジネス2009年10月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
同誌ホームページには、主要記事の概要や最新号およびバックナンバーの目次などを掲載しておりますので、どうぞご利用ください。
日経ソリューションビジネス・ホームページ