さほどの期待を抱いていなかった顧客。印象を変えたのは、制度化されて間もない特定保健指導に対する深い業務知識だった。利用者目線のプレゼンが受注の決め手となった。
「このプレゼンで第1号ユーザーを決めるぞ」。
シンコム・システムズ・ジャパン(シンコム)の技術部長である八木邦芳は、こんな思いを込めて三菱電機ライフサービスの最終プレゼンに臨んだ。2008年9月19日のことだ。
シンコムが提案していたのは、2008年4月に施行された健診制度「特定健康診査・特定保健指導」(特定保健指導)の業務を支援する「シンコム・ヘルスケア・システム-S」である。社員数25人の同社が、医療福祉分野への参入を狙って開発した戦略的な製品だった。
開発を陣頭指揮したのが、技術部長の八木である。製品に対する八木の思い入れは、シンコム社内の誰よりも強かった。
業務に精通した担当者を同行
三菱電機ライフサービスは、三菱電機の100%子会社で、主に三菱電機グループ向け福利厚生事業を手掛けている。通称、「メタボ検診」と呼ばれる特定保健指導も、事業の一つである。
特定保健指導は、満40歳以上の社員のうち腹囲やBMI(体格指数)などの測定値が基準値を超えた社員に対し、生活習慣の見直しを支援する制度である。
三菱電機ライフサービスでは、最初に管理栄養士が対象社員と個人面談し、体質改善のための取り組みや目標などを設定する。その後6カ月間、管理栄養士がメールで社員を支援する。
これまで、同社は手作業で対応していたため、対象社員を100人程度に抑えていた。三菱電機グループには1万~2万人の対象社員がいる。システム化の狙いは、業務効率を高めてより多くの社員を支援することにあった。
三菱電機ライフサービスのIT化推進室ビジネスIT化グループマネージャーである山田良彦は、シンコムを含めて19社の製品を検討していた。シンコム・ヘルスケア・システム-Sを知ったのは2008年7月上旬、情報収集に訪れた展示会でである。
本記事は日経ソリューションビジネス2009年10月30日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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