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 近年、日経コンピュータの「取得したいビジネス資格の評価」でITコーディネータ資格取得への関心がトップになりました。調査対象はユーザー企業のシステム部門とITベンダーです。

 その背景には、経営とITが一体化した「IT経営」の構築が急務となってきていることがあります。「業務の効率化」を目的としたシステム開発の時代は過ぎ去り、いまや「経営力を高める」という目的でITを戦略的に使いこなすことが求められています。そのために、もう10年も前から「経営が分かるIT人材」「ITが分かる経営企画人材」の育成が叫ばれていますが、いまだ人材不足の状況です。

 こうしたニーズに応えるため、ITコーディネータ協会はIT経営を推進するガイドラインとして、「ITコーディネータ プロセスガイドラインVer.2.0(ITC PGL2.0)」を公表しています。経営者の立場に立って、経営とITを橋渡しし、真に経営に役立つIT投資を推進・支援するための手法です。

 本連載では、ある中堅ITベンダーの経営再建を題材に、ITコーディネータのもとでヒアリングから経営戦略/IT戦略を策定するまでを解説していきます。PGL2.0のプロセスに則り、「いかにしてIT経営を実現するのか」「そこでITコーディネータはどんな役割を担うのか」を具体的に説明したいと思います。

 IT経営の“答え”は一つだけではありません。しかし、結論に至るまでの過程において、とても効果的なアプローチ方法はあります。そのアプローチ方法であるPGL2.0を解説することが本連載の目的の一つです。皆さんもこのアプローチ方法を学びながら、題材となる中堅ITベンダーの事例を通して、最も望ましいと思われる施策を一緒に考えてみてください。また、ITコーディネータ試験の受験に役立つ情報もお伝えしていきます。

 当方は、コンサルタントとして戦略策定を指導するITコーディネータの立場です。それではスタートしましょう。

「大阪事業部を改革して儲かる事業構造に」との依頼が舞い込む

 先日、ある中堅のITベンダーから「大阪事業部を改革して儲かる事業構造にしたいので、事業戦略の策定を支援してもらえないか」という話がありました。この案件をもとに、IT経営に向けた戦略立案プロジェクトの実際を追いかけていきます。

 ITコーディネータとして、まずは事前にプロジェクトの対象範囲と実施事項を押さえておくことが最初の作業になります。お客様から「儲かる事業構造にしたい」と言われているのですから、プロジェクトの対象範囲は「経営戦略」と「IT戦略」が直接関係する分野です。どんな成果物としてまとめるのか、実施事項を想定しておくことが必要です。

 経営ビジョンと経営戦略を描き、その実施計画をまとめた「経営戦略企画書」、経営戦略に沿って業務プロセス改革とITインフラ構築の方針をまとめた「IT戦略企画書」およびIT戦略の「実行計画書」が対象の成果物になります。

 作業としては、事業ドメイン、事業ビジョン、経営リスク、投資対効果、経営管理指標、IT 環境分析、目標ビジネスプロセス、IT戦略と実行計画書、ITガバナンスを検討することが必要になります。この連載で一つずつプロジェクトメンバーと討議して行くことにします。

 まず、ITコーディネータとしてプロジェクトへ参加するためには、「企業のプロフィール」、「事業組織と特徴」、「対顧客活動状況」、「マーケティング環境要因」などの調査が事前に必要になります。この活動は、プロジェクトに参加する時に、お客様のプロジェクトメンバーとよりスムーズな会話が出来るように業務知識レベルにできるだけ近づけておくことと課題解決の概略を把握することにあります。