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 日経情報ストラテジーは、今月末に発行する2013年1月号から誌面を大幅にリニュ ーアルします。デザインやレイアウト、表紙の刷新だけでなく、連載やコーナーも大幅に入れ替えます。「経営革新にITを活かす」の編集方針をさらに強化するために、 経営とIT(情報技術)を融合した編集企画を積極的に展開します。雑誌のほかセミナーなども通して、CEO(最高経営責任者)とCIO(最高情報責任者)、そしてIT活用の新しいあり方や役割を考えていこうと思います。

 1月号の特集は「壁を越える組織」がテーマです。企業が独創社員を育てることで彼ら彼女らが先頭に立って組織力を引き出し、縦割りや成長への壁(障害)を突破している実例をまとめています。そこではITの活用が大きな鍵になっています。

 また新連載の1つとして「ドラッカーに学ぶメンタルヘルス・マネジメント」を始めます。厳しい経済環境のなか、心の不調を訴える社員が増えています。そこでピー ター・ドラッカー氏の経営についての言葉をもとに、オフィスにおける社員へのケアや管理の大切さを説いています。心の不調を訴える社員が出たら、軽症のうちに元気づけて、前向きな組織を作り上げる秘訣をまとめています。

 ともすると、ドラッカー氏とメンタルヘルスを結び付けることは唐突に感じるかもしれません。しかし、彼の考えを解きほぐすことで、風通しのいい組織の整備に役立つのではないかと感じています。

 経営とITの融合についても同じです。それを実感したのは、今から9年ほど前、ド ラッカー氏を自宅に訪ねた時でした。それは米カリフォルニア州の日差しが暖かい、 ある日の午前でした。クレアモントの自宅前に車を停めると、ちょうどドラッカー氏 のご婦人とお嬢さんが日課のテニスから戻り、自宅に入るところでした。ドラッカー 氏は毎朝、2人のために朝食を作ることを日課にしているということでした。挨拶の後にそんな話をしながら、家に入りました。

 自宅は大豪邸というわけではありません。米国のごく普通の邸宅で、ドラッカー氏 の応接室も一般的な広さでした。マネジメントについてドラッカー氏に聞くと、すぐに出てきた言葉が「テクノロジスト」でした。初めて聞く言葉だったので定義を聞くと、自宅の近所にある病院の循環器科で働く女性看護師の話になりました。彼女は親切で、引き抜きの話もよくくるほどスキルが高く、近所で評判の看護師でした。彼女は看護師という職業に誇りを持ち、給与やポストにそれほどこだわっているわけではないということでした。「これからはどんな職業にもこうした働き方をする人が増えてくるだろう」。ドラッカー氏はそう語っていました。

 同じ頃、島津製作所に勤務する田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞し、時の人になっていました。田中氏も民間企業の研究者として高いレベルの研究を重ねて、ノーベ ル賞に輝きました。日本版テクノロジストといえる存在で、こうした方々が今後増えていくのだなと、ドラッカー氏の話を聞いて感じたものです。テクノロジストは自立性と専門性が高く、だからといって一匹狼というわけはありません。だからこそ組織や企業に大きな影響を与えます。

 今号の特集で登場する独創社員もそんな働き方の人々です。ドラッカー氏のテクノロジストの考えは、マネジメントから一歩踏み出した概念でしょう。仕事の専門性が高く、さらに自立的に自身を管理する。計数管理も自身で行うのがテクノロジストです。それだけでなく周囲も巻き込み、組織を変革していく強さまで持っています。

 ドラッカー氏は「名称はCIOでも何でもいいが、チャンスを増やして企業価値を高める仕事をすることが大切」とも語りました。ドラッカー氏があえてCIOに言及したのは、マネジメントにとって情報の整理と活用が肝だとの認識があったためです。た んなる社員の管理では、付加価値を生む仕事にはなりません。

 そこで欠かせないのがITです。テクノロジストの把握から育成計画、経営・事業戦略の立案などをITを使って綿密に構築していくことこそ、新しいマネジメントといえるのです。

 特集では企業が独創社員を増やしながら、壁を越えて成長する方法を網羅しています。経済環境が厳しいなかでも、マネジメントとITを融合させ、失敗の少ない運営をしていかなくてはいけません。そして経営革新により新たな成長モデルを描いてこそグローバル競争で勝ち抜けます。そんな問題意識を込めた誌面刷新です。今後もご愛読をお願いいたします。