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 「投資対効果をいかに適切に把握するか」は永遠のテーマです。もし、投資額に対する適正な収益(成果)の見通しがなく投資を実施すれば経営を危うくしかねません。経営戦略に基づいた施策に対する適正な投資には、投資対象である業務機能や対象資源(ヒト、モノ)を定義することが必要になります。事業ビジョンの確定にはこの投資対効果の裏付けが必須要件です。このことを踏まえて、分かりやすい投資対効果の算定規準を定義しておくことが経営上の前提になります。

 本連載では、中堅ITベンダーの「IST社」をモデルに、大阪事業部長の山田氏、営業課長の中川氏、SE課長の上野氏といったプロジェクトメンバーとの対話を通して同社の大阪事業部を「儲かる事業」にするための企画を進めています。プロジェクトを推進するうえで前提となっているのは、ITコーディネータ試験の出題範囲に含まれる「ITコーディネータ プロセスガイドライン2.0」です。

 前回の討議では、事業の戦略目標/事業施策に対するKPI(Key Performance Indicator、業績評価指標)と目標値を作成しました。この目標値に基づいて投資要件を洗い出し、投資対効果を算定することになります。今回は、投資対効果を算定の前提となる算定規準を作成する討議を行います。

投資対効果算定の事前準備作業

 事業戦略実現のシナリオ(戦略マップ)に沿って投資対効果を算定するための基本知識の修得、算定規準の討議、投資要件のロードマップ化に向けた事前準備作業を行います。

 流れは以下の通りです。

◆事業投資対効果の算定手法を理解する
◆事業投資対効果の算定規準を作成する
◆戦略目標や事業施策をロードマップ化する

 それぞれを順に説明しましょう。

事業投資対効果の算定手法を理解する

 今日はいよいよ事業の投資対効果の算定を開始するということで、私(ITコーディネータ)はIST社へお手伝いに伺いました。早速、中川氏から質問です。

営業課長の中川氏:投資対効果が高いというのは、100万円投資したら100万円以上回収できるという意味ですよね?

SE課長の上野氏:そうですが、投資対効果の算定では「いつまでに回収できるか」や「どれだけの収益性があるか」を明確にすることも必要になりませんか?

:中川さんや上野さんのおっしゃる通りです。少し整理しましょう。事業の投資対効果の算定には次の2つの観点が重要です。1つ目は「投資費用の把握」、2つ目は「投資回収期間の把握」です。

 1つ目の「投資費用の把握」とは、投資費用とその費用種別を把握することです。費用がどの程度かを明確にできないと目標利益を得るのにどれだけの売上高が必要になるか分かりません。費用はその性質によって固変分解し、一般に損益分岐点分析を用いて分析します。

中川氏:費用の固変分解とは何ですか?

上野氏:そこはこの前、勉強しましたのでまとめてみましょう。

:それでは説明をお願いします。ホワイトボードは使いますか。

上野氏:ええ、使いましょう。固変分解とは、事業の総費用を固定費と変動費の2種類に分類して把握することです。売上高が変動しても固定的に支払う費用が「固定費」で、売上高に比例して変動する費用が「変動費」です。

 例えば、固定費としては給料、家賃、減価償却費などがあり、変動費としては材料費、仕入費、外注費などが該当します。ここで減価償却費は、機械や備品等の固定資産の資産価値減少額を指します。例えば、昨年100万円で買ったサーバーが今年80万円ぐらいになったとすれば、サーバーの価値は20万円減ったことになります。一般に購入資産においては一定額で価値が減少するという定額法によって減価償却分が毎年経費として計上されます。ここまではよいですか?

中川氏:分かりました。続けてください。