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Q1 最適なIT資源を調達するための判断規準(材料)が分からない

 我が社は18年前に、当時の先端技術を取り入れたクライアント/サーバー型の基幹業務システムを構築しました。しかしその後の経営環境の変化、特に2011年3月の東日本大震災により既存の大手取引先との取引停止などがあって、国内の新規顧客獲得や海外への販路開拓を含めた事業戦略の大きな見直しを迫られました。

 現在の基幹業務システムだけでは新しい事業戦略に適応できず、ユーザー部門からも不満が噴出しています。このままでは情報システムが経営の足を引っ張ると感じて、経営判断にてシステムの再構築を行うこととしました。

 最近はクラウドコンピューティングという用語をよく聞きますが、我が社もそれを導入した方がよいのでしょうか。また、営業員や外回りのサービススタッフから、モバイル端末で現場からの生の作業報告を収集したいというニーズもあります。モバイルコンピューティングの活用を検討するとともに、情報セキュリティ対策も強化が必要と思われます。最近の複雑多様で分かりにくいIT事情の中から、全体最適なIT資源調達を行う指針を教えていただきたいと思います。

A1 クラウドやモバイルなどは適用分野を見極めて調達する

 最近、クラウドコンピューティングやモバイルコンピューティングが、経営を支援する強力なテクノロジーとして注目されるようになりましたが、その調達や使い方に関しては、適用する業務の特質を考慮しながら判断する必要があります。また近年、重要性が認識されてきた、情報セキュリティリスクへの対応も避けて通ることはできません。

 この質問では経営環境の大きな変化によるニーズに対応して、最適な資源を選択し構成する指針が求められています。ここでは下記に示す項目に沿って最新のテクノロジーを踏まえたIT資源調達のポイントについて述べます。

  1. 最適なIT資源調達をするためのITへの要求仕様とは?
  2. クラウドコンピューティングかオンプレミス型かの判断基準
  3. モバイル活用に向けたIT調達の考慮点
  4. 最近のIT事情の中で考慮すべき情報セキュリティ
  5. 全体最適のIT資源調達は組み合わせの選択で決まる

1.最適なIT資源調達をするためのITへの要求仕様とは?

 既存の情報システムでは、社内に設置したクライアント/サーバー型と呼ばれるシステムの中に、ITへの要求仕様のすべてが盛り込まれています。今回のシステム再構築では従来の基幹情報システムの再構築に加えて、新たな経営ニーズによる情報システム構築が求められます。またモバイルコンピューティングの導入では、これまでIT化の対象ではなかった分野が、新たなITニーズとして加わります。

 IT資源調達に向けて、各業務改革ニーズをIT要求仕様に落とし込む際には、業務改革ニーズを構成要素化して定義し、各々の構成要素について最適なIT資源の選択ができるような要求仕様にすることが必要です。その手順は図1のようになります。

図1●業務改革ニーズ定義からIT資源調達までの流れ
図1●業務改革ニーズ定義からIT資源調達までの流れ
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 この例では現行の基幹業務システム(v)(vi)を新システムでもオンプレミス型で残し、細かい周辺業務(iii)(iv)を現行のオンプレミス型からクラウドコンピューティングに移しています。さらに新規の業務改革ニーズとして定義されたモバイル支援業務など(i)(ii)を、クラウドコンピューティングとしてIT資源調達しています。

 業務改革ニーズの要求項目には調達すべきIT資源の形態として、クラウドコンピューティング注1がふさわしいか、従来型のオンプレミス型注2がふさわしいかなど、対象の業務の特性を分析した上で、判断可能な指針を含めてITへの要求仕様に落とし込みます。また各々の要求項目の中で想定されるIT資源の形態によって、導入および運用に関する要求項目も変わってきますので、これらも定義しておく必要があります。

注1:クラウドコンピューティングというのは、通信回線の高速化やインターネットのような、ネットワークインフラの普及に伴って出てきたコンピューティングサービスで、インターネットを通して外部のITベンダーの提供する業務サービスを利用するものです。
注2:それに対して現行のクライアント/サーバー型システムのような、自社内のコンピュータで業務サービスを提供する形態を、オンプレミス型と呼びます。