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金融庁が情報システムの調達基準として、ITSS(ITスキル標準)に沿ったスキル・レベルをITベンダーに申告させることを決めた。ITベンダーの技術者の経験やスキルを数値化して把握することで、料金や品質の適正化を図るのが目的。他の中央省庁に波及する可能性もある。


本記事は日経コンピュータ 2005年9月5日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。


 「プロジェクトの中核メンバーについては、ITスキル標準(ITSS)に沿った形でスキルセットを明示せよ」。

 金融庁は今秋以降、すべての調達案件において、ベンダー側にIT技術者のスキル・レベルを開示させる方針を決めた(図)。第1弾として、来年3月末までに成果物を納入するシステム・コンサルティング業務の委託案件において、ITSSに沿ったスキルセットの記述を要求した。

 ITSSは、経済産業省が作成したスキル定義書。IT技術者の職域を「コンサルタント」や「プロジェクトマネジメント」といった11職種38専門分野に分け、それぞれに求められる実務経験やスキルの内容を、最大7段階あるレベルごとに記述している。

 金融庁が調達基準にITSSを採用したのは、これまで少なからず存在していた過剰なシステム投資や品質の低下を防止するため。2005年度に約24億円の情報システム関連予算を持つ同庁は今年2月から、仕様書や調達プロセスの整備といった調達改革を本格的に推進してきた。ITSSの採用もその一環。同庁CIO補佐官の桑原義幸氏は、ITSS採用の目的を「適正な調達によりコストを押さえつつも品質を高めなければ、必要な情報システムを構築できない」と話す。

 これまで金融庁は入札条件として、情報処理技術者試験や技術士といった資格保有状況を採用してきた。しかし資格の有無だけでは、実務経験の多少を検証しにくいという問題がある。そこで、レベルの評価指標に実務経験を取り入れているITSSを追加することにした。「情報システムの構築の成否は、人材の能力にかかっている。IT技術者の経験やスキルを定量的に把握するための尺度としては、ITSSが現時点では最適な道具」(桑原CIO補佐官)との判断だ。

 ただし問題もある。ITSSは資格試験とは異なり、スキル・レベルを公的に認定する仕組みがない。レベルの評価は各ベンダーに任されており、実態よりも高いレベルを申告される可能性は捨てきれない。評価手法の差異によるベンダー間のレベルの食い違いも生じるだろう。

 この点については、桑原CIO補佐官も「大きな課題だ」と認める。だが「ITSSだけで評価するわけではないし、何度か繰り返せば金融庁側にも評価ノウハウがたまり、レベルの水増しなどを見抜けるようになる。まずやってみることが重要だ」という。

 これまでITSSは、IT業界内の人材育成を主目的に使われてきた。それも最近は、ファイザーや東京電力といったユーザー企業が、ITベンダーの人材スキル評価に利用する使うケースが増えつつある。8月末時点で、金融庁以外の中央官庁は、調達基準にITSSを採り入れることに対し、「具体的な計画はない」とする。しかし、金融庁が正式にITSSの採用を決めたことで、他省庁にもその動きは波及しそうだ。

(高下 義弘=IT Pro開発)