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日本情報システムユーザー協会は、システム構築費の見積もり時に利用するリスク・チェックシートを作成した。プロジェクトに潜在するリスクと、それが費用に与える影響を定量化する試みだ。ユーザーとベンダーのリスクに対する認識を一致させる効果も期待できる。


本記事は日経コンピュータ 2005年9月19日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 「ベンダーが提示する見積もり額に対してユーザーが『不透明』と感じている比率が高まっている」。日本情報システムユーザー協会(JUAS)の細川泰秀専務理事は、こう語る。その理由は、「システムが複雑化し、構築コストを上げるリスク要因が増えているのは事実だが、そのリスクに対するベンダーとユーザーの意識に大きな開きがあるから」(同)だ。

 その是非はともかく、現時点でシステム構築にかかわる人件費は「工数(人月)×人月単価」で提示される。当然ベンダーは、「新しいビジネスモデルなので、ユーザーが要件定義に手間取る可能性が高い」、「新技術・新製品を使うため、トラブルが発生しやすい」などのリスクを織り込み、工数を考える。しかし、リスク織り込み分があまりにも見えづらいため、ユーザーは「不透明」と感じてしまう。

 そこでJUASの「システム開発生産性評価プロジェクト」は、システム構築プロジェクトで起こり得るリスクをリストアップ。それぞれに重み付けをしたリスク・チェックシートを作成した。インテグレータであるジャステックが実際に社内で使っているチェックシートをベースに、住友電気工業などのユーザー企業でシステム構築に携わる約20人が経験を基に手を入れた。

 チェックシートでは、「ユーザー側のプロジェクト・メンバーはシステム化の対象となる業務知識を有しているか」といったリスク要因42項目を列挙。4~5段階の評価基準を示した上で、コスト全体へどの程度影響するかを数値化した(表)。影響度合いを工程別に定義したため、工程ごとに別のベンダーに作業を依頼する場合にも利用できる。業務知識に関するリスク要因なら、「中核メンバーの一部に業務の未経験者がいる」ケースを標準とすると、「メンバー全員が未経験者」であれば「要件定義のコストは5割増しになる」といった具合だ。

 チェックシートは、JUASに連絡すれば誰でも入手し、利用できる。

 もちろん、今回のチェックシートはあらゆるプロジェクトに適用できるだけのリスクを網羅しているわけではないし、影響度合いに科学的な根拠があるわけでもない。しかし、ユーザー企業とベンダーがリスクに対する認識を共有するツールになることは確かだ。

 「業務経験者をメンバーに入れる」といったユーザー側がすべきことを明らかにするという点で、ベンダー側にもメリットがある。万が一プロジェクトが途中でつまづいた場合、事前に明らかにしたリスク要因のどれがいけなかったかを考えることで、原因も追及しやすい。JUASは、「多くのユーザー企業で実際に使ってもらい、その結果をフィードバックしてもらうことでより良いものにしていく」(細川専務理事)考えだ。

(矢口 竜太郎)