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中堅・中小のITベンダーが受注するシステム構築を対象にした損害保険市場に、三井住友海上火災保険が新規参入した。競合各社は、同種のIT保険で苦戦している。だが三井住友は今後、大手ユーザー企業が中堅・中小ITベンダーに直接発注するケースが増えるとみる。


本記事は日経コンピュータ 2005年10月3日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 三井住友海上火災保険が9月に発売した「ITプロテクター」は、中堅・中小規模のシステム・インテグレータに的を絞った保険商品だ。請け負ったシステム構築作業におけるトラブルや、xSP(各種サービス・プロバイダ)がサービス提供のために運営しているシステムへの不正アクセスやデータ破壊・消去などによって生じるユーザーへの損害賠償を補償する。年間売上高3億円のソフト開発会社が賠償限度額2億円で契約する場合、年間保険料は約118万円である。

 同様の保険は、大手損害保険会社各社が2000年前後から提供している。東京海上日動火災保険の「e-RiskSolution」や、損害保険ジャパンの「商賠繁盛 IT事業」などだ。しかし、各商品の年間契約数は平均100件程度と伸び悩んでいるのが実情だ(表)。

 損保ジャパンの永塚純一企業商品業務部賠償保険グループ主任は、中堅・中小向けIT保険について「市場拡大までには、まだまだ時間がかかりそうだ」と嘆く。「中堅・中小のITサービス事業者は、大手の下請けとして働くケースが多く、自社で保険を掛ける必要があるようなリスクを負ってまで、顧客と主契約を結ぼうとしていない」(同)。主契約を結ぶ大手ITベンダーが、「オーダーメイド型のIT保険に入るのが一般的」(東京海上日動の川端宏明企業商品業務部賠償責任グループ主任)という。

 これに対し三井住友海上は、中堅・中小ITベンダー向けIT保険の市場が、比較的早期に立ち上がるとみている。「IT投資額の伸びを抑えようとする動きが強まる中では、ユーザー企業が中堅・中小のITベンダーに直接発注するケースが増える。その上、受注条件は厳しくなる一方なので、リスクヘッジのためのIT保険が必要になる」(同社の宮崎秀雄火災新種保険部責任保険グループ主任)。

 市場拡大に向け三井住友海上は今回、無料の簡易リスク診断サービスを用意した。約50の質問に回答すると、システム構築に伴うリスクを計算し、ITプロテクターの保険料を算出することで、IT保険の契約を結びやすくする。同サービスは、Webサイトで提供する予定だ。

 実は競合他社も、市場変化の兆しを感じ取っている。年間契約件数が100件程度とする東京海上日動は、「これまでは当社の営業不足の面もあった。契約件数は徐々に増え始めており、今後は期待できる」(川端主任)とするし、市場参入を控えてきた日本興亜損害保険も、2006年内にはIT保険を投入する計画だ。

 実際、ユーザー企業の間には“大手ITベンダー頼み”からの脱却を図ろうとする動きが出始めている。「当社の期待に沿うITベンダーであれば、会社の規模を問わず直接発注したい」とする大手ユーザー企業の情報システム部長は少なくない。

 後は中堅・中小のITベンダーが、どれだけリスクを伴うシステム構築の最前線に乗り出してくるか。ユーザー企業はITコストの最適化を図るには、そのほうがベターと考えている。

(戸川 尚樹)