フィッシング、スパイウエアなど次々に現れる脅威。ネットでビジネスを展開する企業にとって、セキュリティ対策は死活問題である。なかでもITで先進的な銀行は、どう対策を打っているか。全国の銀行130行にアンケートを実施した結果からは、利便性とのトレードオフに悩む姿が見える。

「手口は以前から指摘されていたが、こんなに早く実害が出るとは」(イーバンク銀行の井上大輔商品本部商品戦略部長)。今年7月、国内の銀行で顧客がスパイウエアによってID/パスワードを盗まれ、不正に資金を引き出された事件は業界を震撼させた。
一方で、「いまやインターネット・バンキングは店頭窓口を超える重要なチャネル」(三井住友銀行の山口賢二マスリテール事業部IT推進グループ部長代理)だ。同行のネット・バンキングの口座数は約600万に上る。東京三菱銀行も約260万で全体の2割を占め、取引量は30店舗分に相当する。メガバンクだけでなく地方銀行も、地域の枠を超えた顧客獲得に向けネット・バンキングを重視している。
大きなビジネス・チャンスがある一方で、その脅威も大きいインターネット。銀行に限らず、ネットで顧客サービスを提供する企業にとって、セキュリティ対策は至上命題となっている。
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図1●ネット・バンキングのセキュリティ対策はさまざま。(領域の広さは採用行数に対応)セキュリティ・レベルと利便性はトレードオフの関係にある |
採用進むソフトキーと乱数表
ID/パスワードの盗難対策の一つは、入力時に盗み見られても特定できないようにすることである。
7月のスパイウエア事件以降、急速に導入が進んでいるのが、ソフトウエア・キーボード(以下、ソフトキー)。入力をキーボードからではなく、画面に表示したキーボードのイメージ・データのクリックで実現する。スパイウエアの代表格である、キーボードから入力した情報を盗み取る「キーロガー」への対策だ。みずほ銀行やソニー銀行が急きょ採用し、三井住友銀行や西京銀行、第四銀行、但馬銀行、富山銀行、福岡銀行が導入を計画している。
ログインするたびに内容が変わる乱数型パスワードの採用も増えている。
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